satton

ミュージックボックスのsattonのレビュー・感想・評価

ミュージックボックス(1989年製作の映画)
4.1
法廷映画の隠れた名作として挙がっているのを見て鑑賞。すごい映画でした。

主人公アンは、シカゴの優秀な弁護士。ある日、ハンガリー移民の父マイクに、突然戦争犯罪の容疑が降りかかる。その容疑とは、戦時中、"矢十字"と呼ばれるハンガリー警察の特務部に所属して、ユダヤ人の大量虐殺を実行したというもの(直接には虚偽の申告により市民権を取得したかが争点)。アンは父の弁護を引き受ける。

アンにとって父は、鉄工所で実直に働き男手一つで兄と自分を育てあげた尊敬すべき人物であり、愛する子の良き祖父である。他方、裁判で語られる"ミシュカ”の所業は、人間とは思えない。この映画では回顧映像みたいなものは一切なく、事実は全て証人の口から語られる。言葉だけなのに、その事実はあまりにも鮮烈で生々しい。父を信じたいが、事実が余りにも重すぎる。そのような苦悩が、ジェシカ・ラングの熱演もあって、心を締めつけてくる。

恥ずかしながらコスタ=ガヴラスという監督を知らなかったのだが、社会派の映画を数多く撮っている方なんですね。他の作品も見てみたくなったが、なかなか入手が難しそうである。

2022年40本目
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