猫脳髄

牡丹燈籠の猫脳髄のレビュー・感想・評価

牡丹燈籠(1968年製作の映画)
3.7
黒沢清「ホラー映画ベスト50」(1993)第33位。

名匠・山本薩夫による大映時代劇。ド定番の怪談モノはやはりシナリオのアレンジと演出に目が行く。

社会派の山本らしく、主人公の新三郎(本郷功次郎)を貧困を教育で克服しようと理想に燃え、長屋の寺子屋で敬意を集める武家の次男坊に据え、相手方の亡霊であるお露(赤座美代子)も武家の子女から零落の果てに操を守るために自害したものとした。新三郎が寺子屋の子どもたちを取るか、社会の犠牲になったお露を取るかで揺れ動くという、現代劇的な筋のとおったシナリオになっている。

また、コメディ・リリーフかつ重要な役割を担う長屋の夫婦を西村晃と小川真由美が、新三郎を守ろうと奔走する占い師を志村喬がそれぞれ好演し、シナリオに華を持たせている。

さらに、亡霊の描写がなかなか面白く、水平垂直にスーッと滑るように移動し、しつこく迫ってくるさまが恐ろしい。社会派シナリオで見せつつ、ショック・シーンにも余念がないのはさすがと言うべきである。
猫脳髄

猫脳髄