このレビューはネタバレを含みます
海外BDと国内VHSで最近ようやく見た。
テンポが良いのであっという間に90分経ってる。衣裳に所々レースが使われていて、風になびいたり背景が透けたりと美しい。
ゴシックなラブロマンス。
作曲はミシャ・シーガル。たびたび登場する「ドンファンの勝利」の旋律が美しい。
オペラ「ファウスト」から着想を得たらしく、劇中劇「ファウスト」にファントムの回想が重なる演出が良い。
悪魔に「自分の音楽で愛される世界」を望み「音楽"だけ"で愛される世界」を与えられたファントム。人々は彼自身ではなく、彼の音楽、金、才能に惹かれるように見える。
腐った顔を覆い隠すのはマスクではなく人皮。個人的には「透明な付け鼻」の登場にめちゃくちゃ興奮した。
自分とクリスティーヌに害がある人間を殺してでも排除しようとする残虐性に対して、大好きなクリスティーヌの晴れ舞台に大はしゃぎする様子がかわいい。
クリスティーヌを地下室へ招いたファントム、とても嬉しそう。おそらくクリスティーヌを恋慕しながら制作したであろう楽譜「ドンファンの勝利」をクリスティーヌが見つけてしまってタジタジ、「弾いてほしい」というクリスティーヌの頼みも断りきれない。演奏を始めると、未発表で誰も知らないはずの歌詞をクリスティーヌが歌いあげる。「君は天使だ!僕の声だ!」と興奮するファントム、「君は音楽を愛してる。僕こそ音楽!一つになろう」と半ば強引に婚約。狂気的で怖い。クリスティーヌも怖がってる。
邪魔者さえ居なければクリスティーヌは自分のものだし絶対に離さないという意志を感じる。
不滅の音楽と共に永遠の時を生きるファントム。クリスティーヌが生まれ変わって再び目の前に現れるまで100年も待ち続ける、恐ろしいほどに盲目で一途な恋。クリスティーヌは自分を愛するはずと信じて疑ってない。悲しい人。
制作予定だった続編「テラーオブマンハッタン」が実現していたら、ぜひ見てみたかった。