たこ

阿賀に生きるのたこのレビュー・感想・評価

阿賀に生きる(1992年製作の映画)
-
撮影隊が地域の人々に受け入れられて、親密な関係を築いているのが感じられてすごいな、と思ったけれど、それはもともと地域の人たちと連携して始めた企画であるらしいことや、佐藤真含めほとんどのスタッフが映画撮影未経験の若者たちで構成されていたこと、なども要因のようだ。

一方でパンフレットでは映されている人々の核心に踏み込み切れていない(踏み込むべき、踏み込めそうな、タイミングがあったにも関わらず)ことを指摘する批評も載っていた。

「彼らは水俣病患者である」というわかりやすいプロフィールをなるべく避けるようにして彼らの平常の生活を映すことで、逆にその生活に翳りをもたらす水俣病の存在がちらつき、はっとする作りになっている。

昭和電工が自分たちに害を及ぼしているのもわかっているが、それ以上に自分たちの生活に深く根ざしてしまっていて切り離せない、という話は、冬ごろにテレビでやっているのをちらっと見た映画イチケイのカラスの内容を連想する(というか水俣病を元に話を作っているんじゃないかと思う)。

たまに画が決まりすぎてる固定ショットが出てくるのが愉快。どうやらカメラマンはもともと写真を撮る人みたいで、納得した。

50時間もある映像を2時間にまとめたみたいな話がパンフレットに出てきたけど、むしろ3年?滞在して50時間なんだなあと思った。自分なら心配になってずっと回してしまいそうで、カメラを回す回さないの判断が興味深い。ずっと回していたわけじゃないから、「今撮ってたのかい」みたいなこともあるわけだ。佐藤真がインタビューをやりたがるけれど、カメラマンはインタビューになると決して回さなかったみたいな話もパンフレットにあった。

脚本があるわけじゃなく、必要なものを撮って、まとめられるの、すごいなあ。
たこ

たこ