くりふ

アンデルセン物語のくりふのレビュー・感想・評価

アンデルセン物語(1952年製作の映画)
3.0
【歌うアンデルセン】

図書館でDVD見つけ、監督チャールズ・ヴィダー、バレエに重きが置かれたミュージカル仕立て…というところで惹かれ、借りてみた。

伝記ではなく、アンデルセンを天性のストーリーテラーとして描いた創作ドラマ。語りが面白すぎて子供を不登校にさせ、故郷の町にいられなくなりコペンハーゲンへ。そこで運命のミューズと出会うが…。

丁寧につくられた良作ですが、何のために展開した物語なのかよくわからなかった。コペンハーゲンの事件が、アンデルセンの全人生を象徴するものに感じられず、TVシリーズの一挿話というかんじでした。

後半は「人魚姫」の物語が要となり、その誕生秘話もまあ、面白いのですが、舞台となるバレエ団のエピソードがどうも、表層的で面白くない。惚れたバレリーナとの距離が、こう余所余所しいと酔えません。

ヒロイン、ジジ・ジャンメールの映画出演は、初めて見ました。プロのダンスを見せてくれますが、現代の視点からはどうも、野暮ったい。

ローラン・プティのパフォーマンスが見られるのも貴重だとは思うのですが、バレエ関連は、古臭さを先に感じてしまった。本作の4年前につくられた『赤い靴』が、特別な映画だったのだと今さらながら実感しました。

演出がよかったのでしょうが、あちらのモイラ・シアラーが、いかに映画のヒロインとして映えていたことか。

アンデルセンははじめ、オペラ歌手を目指したり、王立バレエ団の学校に在籍していたこともあったそうで、その経歴を生かした物語化は興味深いのですが…終わってみると、コレジャナイ感をおぼえました。

他、コメ見かけただけですが、デンマーク本国では不評だったとか。

アンデルセンを演じたダニー・ケイには興味なかったのですが、ああ、いいキャラクターを持っているのだな…と本作では感じられました。

歌われるナンバーは、心動くものが幾つかありました。

<2019.8.10記>
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