Jeffrey

別れの朝のJeffreyのレビュー・感想・評価

別れの朝(1970年製作の映画)
3.0
「別れの朝」

冒頭、第二次世界大戦中のフランス西南部ランド地方。貴族娘、ドイツ軍の若き士官、恋、国境、許されない愛、欲望、挫折、結婚式、秘密、再会、運命、戦争と死、愛馬と将校、破滅。今、激動の時代を背景に壮大な恋愛叙事詩が写し出される…本作はジャン=ガブリエル・アルビコッコ監督による幻想的で静かな語り口に激情を映しだしたフランス映画の名作として名高い本作をこの度、DVDを購入して初鑑賞したが素晴らしい。漸くの思いである。それはこのDVDが2004年にキングレコード株式会社によって販売元が設立し、発売元が株式会社デックスエンタテイメントが行った企画によって幻の映画が初円盤化され漸くリリースされた。これらは未だにレンタルも配信もされない幻の作品としてセル版専用でしか見れない映画である。

とにもかくにもこういう幻想的なカメラワークで、美しい映画は様々な理由によってリリースができない不条理な世界にある。権利関係に問題があったり、原版が行方不明もしくは大手メジャーが抱えた他社には扱わせない態度など様々だ。そういった中、何とかDVD化されたこの作品をこの度、初鑑賞したのだが、やはり魅力的なのは女優のカトリーヌの美貌だろう。あの独特な顔つきは忘れられないし、彼女がショートカットになってからは更に魅力的になったと思うが、この作品ではロングヘアが魅力の1つになっている。それとやはりマチューのドイツ軍兵士の美男子的な中にある悪魔的な思想だろう…。

彼はイケメンなのにあまり映画に出演していないのは個人的には残念だ。それと同時にこの作品を撮りあげた監督もわずか6本程度しか作品を撮っていないのも残念だ。この画面構築はかなりの評価を得たと思うのだが、何よりいちど見たら忘れられない幻想的な演出がなんといっても素晴らしい。とにもかくにも音楽会の巨匠フランシス・レイが音楽を担当しているだけでこの映画を見る価値がある。この監督は親子であり、父親と息子で制作した映画である。去年にシネマライブラリーから初BD化された「金色の眼の女」の監督である。

原作はクリスティーヌ・ド・リボワールのもので、1971年に公開された作品で、主演を務めたのはカトリーヌ・ジュールダン、彼女と言えば「あの胸にもういちど」が有名だろう。そしてマチュー・カリエールの2人だ。彼と言えば「青ひげ」が有名だなのか…。



さて、物語はフランスの貴族の娘が、駐留するドイツ軍の青年将校と恋に落ちる。本当ならばジャンと言う好きな人がいたのだが、彼は男性へと走っていってしまう。だが、二人が再会したとき、青年は前線から脱走して生きる意欲を失っていた。徐々に冷酷な叔母の言葉により精神崩壊していく娘の葛藤がメロドラマ風に描かれていく。


本作は冒頭から非常に魅力的である。白馬がナラ屋敷の門に現れる。 1人の女性が森の中を散策する。そしてジャンと言う言葉を言い放ち、彼の背後から抱きつく女性、男は鳥に針のようなものを刺す。彼の母親のようだ。そこには家族一同が集まり、ユダヤ人の結婚式なんかには行かないと話している。続いて、この豪邸の娘が数匹の馬と森でかけっこをする描写に変わる(この時、豪邸内では結婚式に娘を連れて行かせない、連れて行くなどとユダヤ人に関しての激論が話されている)。

結局、父親は娘を連れ出す。そしてとっさに車の前に飛び出したジャンと言う青年も車に乗り一緒に結婚式場へと向かう。彼とは変わり、結婚式場での披露宴前の中庭でのダンスが映し出される。そしてそこへ厄介者の姉(結婚式を挙げる妹の)が乱入して、結婚式をめちゃくちゃにしようとする。女は関係者につまみ出される。カットが変わり、豪邸が写し出される。車から降りてきたのは家政婦のようなおばさんで、奥様にドイツ軍がやってきて買い物ができませんと伝える。


続いて、ドイツ軍に追われる人々をとらえるカメラ、大草原に馬に乗ってやってきた娘、兵士たちに見つかり拳銃で撃たれる男、そしてその豪邸はナチスドイツの軍人に半ば占領される。そして銃撃の音に怯える馬を馬小屋に戻し落ち着かせる娘ニナの姿、そこでジャンと接吻する。そしてジャンは混乱した家庭を見て学友のバンサンの所へ行ってしまう。ニナは心を傷つき、唯一の親友ともいえる白馬と一生懸命戯れる。

その白馬を優雅に乗りこなす若きドイツ兵の士官カールに恋をするニナ。だが、彼女はジャンがいるバンサン邸へ向かう。ところがジャンは全くニナに対しての感情を抱いていないことに気づいた彼女は絶望する。これをきっかけに彼女はカールに身を負かし抱かれ始める…と簡単に説明するとこんな感じで、フランシス・レイの音楽と共に海の中に入っていくショットは最高のシーンである。そして裸で白馬にまたがるドイツへの姿も面白い。


この映画冒頭の豪邸の室内の緑がかった演出がすごく幻想的で美しい。あの品のあるライトアップはファンタジー映画のようだ。家具も凝っているし、白馬と共に黄昏の海へと入っていくドイツ兵の姿、それを眺めながら砂浜を同じく馬にまたがりながら前へ進む彼女の姿のフレームは美しい。

この映画面白いことに、戦争映画を背景に男女の恋愛を映しているのだが、男性同士の恋愛も多少なりとも入れている。非恋好きには堪らないだろう…あと、バッドエンド好きな君へもお勧めする。この映画を一言で言うなら1に馬、2に馬、3、4も馬で5も馬…そして6に拳銃と言ったところだろう。何を言っているかは映画を見ればわかるはず。
Jeffrey

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