カント

幸せはシャンソニア劇場からのカントのレビュー・感想・評価

4.7
素晴らしい!
シャンソン・ミュージカルの楽しさと、劇場再建の苦闘と、パトロンとの愛憎劇と、父子愛と、盛り沢山のフランス映画の秀作。

1935年のフランス・パリ、ファブール町の小さな劇場シャンソニア。
※地形的に見るとモンマルトルの麓、昔ムーラン・ド・ラ・ギャレットの有った辺りか?

ピゴワル・ジェルマンはシャンソニア劇場で裏方として働いていた。
トニー・ロシニョールや、ケバい女のルイ・ドルフィユが活躍。ピゴワルと同じ裏方エミール・レポビッチ(通称ミルー)は、労組の活動に熱が入っててストライキや占拠など、当時の労組の戦い方を駆使。

シャンソニア劇場のオーナーで、ルイの父ドルフィユ氏は、金貸しギャラピアの負債に返済のメド立たずピストル自殺。

シャンソニア劇場は廃れて潰れる。

ピゴワルの息子ジョジョは、謎の人物ラジオ男からアコーディオンを習い、小遣い稼ぎして、幼いながらも父ピゴワルを援助する偉い子供!
失業中の父ピゴワルに扶養の責務は果たせないと、ジョジョは、ピゴワルから引き離されてしまう。

よーし、シャンソニア劇場を再建しよう!

そんな時、亡きオーナーのドルフィユを頼り1人の美女ドゥースが訪れる。
金貸しギャラピアが美女ドゥースを見染め、シャンソニアの舞台に上げる様に画策。
※金持ちがパトロンとなって歌手や踊り子を囲う精神風土は「ドゥミ・モンディーヌ」と呼ばれた娼婦を愛玩する19世紀末の頃から変わっていない。

ドゥースは美女だけど芸のレパートリーが足りない。客から急かされて、しょうがなく1916年の懐メロ「パリに恋して」を歌う(本編57分頃)

そして…
この歌がエクセレント!
けっして最上級に上手な訳じゃないけど、切々と儚く朧気に歌いあげる抑揚に、シャンソンの真髄をfeelしまくり!
※私、このシーンだけ5回巻き戻した。
※DVDなので実際は巻き戻してない(笑)

後半は、ピゴワルと息子ジョジョの無償の愛。謎のラジオ男の正体など、見所ありあり。

※ジョジョ君は合唱映画の名作「コーラス」でペピノを演じた、あの愛らしい少年。

監督も主人公ピゴワルも脇役も「コーラス」と、ほぼ同じでした。
2015-9-1
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