ブラックユーモアホフマン

第9地区のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

第9地区(2009年製作の映画)
4.0
もう12年も前の映画なんだ。
ちょうど僕が映画をちゃんと観始めた頃に流行ってた。その頃から観たいなーと思いながら観てなかった。ようやく。

面白いし政治的な背景を上手くSF設定に落とし込んでるのも分かるけど、これがオスカーの作品賞含む主要部門に幾つもノミネートされたって不思議だよな。てかこの頃のオスカー迷走してたからな。作品賞候補の数増やしたりして。

『エリジウム』も『チャッピー』も観てないけど、ニール・ブロムカンプは結局『第9地区』の一発屋みたいな印象になっちゃってて可哀想。いま『デモニック』って新作が未体験ゾーンで上映されてるけど、作品はコンスタントに作り続けているようで、それは結構なことですわ。

『ハッシュパピー バスタブ島の少女』のベン・ザイトリンとかもオスカーノミネート一発屋タイプ。その後マジで名前聞かないけど何してるんだろうな。

このモキュメンタリーっぽい作風、懐かしいわあ〜。ちょうど2000年代後期の作風って感じ。『クローバーフィールド/HAKAISHA』とかも。2010年代から減っていくと思う。

この揺れるカメラワークもこの頃の流行りって感じ。この年のオスカー作品賞『ハート・ロッカー』も似てる。元はと言えばポール・グリーングラスが始めたようなやつ。そして僕はあまりこういうカメラは当時から好きじゃなかったので、廃れてくれて嬉しい。でもこの映画には合ってるとは思う。でもなんかもう今観ると古く感じるな。

シャールト・コプリーといえば『ハードコア』もメカのデザインとか人体実験系なところとかカメラワークとか似てたよな。イリヤ・ナイシュラーは逆に『第9地区』が好きだったりするのだろうか。

脚本がよくできてる。アパルトヘイトの寓話化な政治風刺SFとして始まり、人体ミューテーション型ホラー映画(古くは狼人間とか透明人間とか最近ならゾンビもそうかも)になって、そこから異種バディもの(ハン・ソロとチューバッカのような)になって、などなど色んなエンタメ要素てんこ盛りな展開をかなりスピーディに捌いてるから飽きることはまず無い。逆に言うと余白が無さすぎて映画的な情緒みたいなものを感じられるシーンが少ないのが欠点かなと思う。映画というよりゲームっぽい脚本や世界観や撮り方や編集だと思った。

そもそも巨大宇宙船が空に浮いてる風景というのがエメリッヒの『インデペンデンス・デイ』を想起せざるを得ないし、宇宙船の音はスピルバーグの『宇宙戦争』っぽかった。終盤マシンに乗り込んで戦うのはキャメロンの『エイリアン2』でしょ。あと恥ずかしながら僕はまだ観てないけどヴァーホーヴェンの『スターシップ・トゥルーパーズ』とか『ロボコップ』とかからの影響もありそう。要するにブロムカンプ、SF映画大好きなんだろうなというのは一目瞭然。

冒頭と最後に出てくる有識者みたいな人たちの中にどう見てもマーク・ライランスにしか見えない人がいたんだけど調べてもクレジットに名前がない。ってことはよく似た別人だったの?

【一番好きなシーン】
豚ぶっ飛ばして攻撃するシーン