すえ

第9地区のすえのレビュー・感想・評価

第9地区(2009年製作の映画)
4.5
記録

【変態リアリズム】

ニール・ブロンカンプ監督の最新作、『グランツーリスモ』を観て衝動に駆られ、氏の作品を久しぶりに再見。

今作を見返して改めて感じたが、ブロンカンプはどこまでもリアリストの変態だ。個人の心理という小さな単位から、組織、そして国家の政治的動向まで細かに捉えている、なんやこいつ。そのリアリズムが銃撃戦で頂点に達し爆発する、くっそ上手い。下手なアクション映画の銃撃戦など取るに足らない、人体破壊に至るまでとてつもない手の込みよう。飛び散る脳漿は中々見ることが無いクオリティ、本物を見たことはないが、これも現実に近しいはず。

そして終盤に出てくる、えっちすぎるメカ。もちろん18禁である。こんなイカした強化外骨格を子供に見せてしまうと、「僕もこのメカに乗りたい!」とエビ側の人間が大量発生してしまうではないか!
こういうメカメカした造形や、グロテスクな造形はブロンカンプのお手の物、彼にしか作れないものがある。

俺と同様に、身勝手な主人公にイライラする人がさぞ多いことだろう、しかしそれは同族嫌悪なのではないか。キャラクターの心理にまで至る徹底的なリアリズムが描写する主人公は、私たちそのものといえる。画面の前では、「なんだこいつ自己中だな、俺ならみんな救うけどなーww」と戯言を抜かすあなたも、実際同じ状況に陥るとこんなもんなのである。結局、なんだかよく分からないエビより、自分の方が大事なのだ。主人公を嫌うのは、自分の像をそこに見ているからだといえる。

ブラックでコミカルでシリアス、めちゃくちゃに好き嫌いが分かれる作品、家族みんなで観るのがオススメのホームドラマ!

2023,271本目 10/17 AmazonPrime
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