何もかもが究極的

第9地区の何もかもが究極的のレビュー・感想・評価

第9地区(2009年製作の映画)
3.7
籠の中の鳥。それは支配される癖がつくと籠の入口が開いても逃げない鳥のように、支配される方が楽だという考え方だ。本作に登場するエイリアンやアームスーツを着たシャールト・コプリーは、人を凌駕する力を持っていても支配される癖のせいで相手に反対する方法が頭に浮かばないという描写がある。
本人達も、それは自分にとって不本意な状態だという事は理解の上で、それを変える方法を試したことがなく、わからず相手から提示された不利な要求に応える方が自分にとって楽だと思ってしまうのだ。
こういう理不尽はどこにでもある風景だ。
映画を見ていると他人ごとだから、こうすれば良いのにというように反抗心も湧くが、いざ私ごとになると相手が眉をひそめる事が怖くなり、萎縮してしまう。とても馬鹿馬鹿しいが、その場の雰囲気やどうでもいい人間関係の為に、人は馬鹿をやらかすのである。さらに恐ろしのは、反抗もせずにその支配される自分のプライドを保つ為の言い訳を考える事に集中してしまう事だと思う。
そんな人間界の縮図がこの映画では描かれていると思う。