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誰がためにのodyssのレビュー・感想・評価

誰がために(2005年製作の映画)
3.7
【ていねいに作られた佳品】

日向寺太郎監督作品。 

新婚間もなくお腹には子供が宿っていた妻(エリカ)を殺された写真館の三代目店主(浅野忠信)。しかし殺人者が少年だったために、公判にも出られず、しかも犯人は1年あまりで少年院を出てしまう。どうするべきか・・・。 

重いテーマの映画だが、テーマ中心になりすぎず、写真館のあるさびれかけた街の風情や、町の人々の様子、写真館での仕事ぶりなどを淡々と映し出していく映像が非常に印象的だ。知り合った若い二人が一緒に自転車に(クルマではなく)乗るシーンも胸に残る。 

新妻を失った主人公をなぐさめる周囲の人々の善意、しかし癒されない彼の気持ち、彼に思いを寄せている幼なじみ(池脇千鶴)・・・。

丁寧な作りと、最後の、観客に解釈を委ねるような結末が、何とも言えない余韻を残す佳作である。
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