みずいろ

「A」のみずいろのレビュー・感想・評価

「A」(1998年製作の映画)
2.7
普通の人たちだったんだなぁと思う。人を殺すのは悪魔でも鬼でもなく、普通の人なんだなぁと。
誰もが小さな声でボソボソと喋り、教室にいれば誰も注目しないようなそういう人たちが、信じる対象を、仲間を、万能感を、必要とされる快感を知った時、何が起こってしまうのかを私たちは身をもって知った。改めて恐ろしいことだったと思うし、この世から宗教がなくならない理由を痛いほど感じた。

そして同時に、心から信じるものを一方的に「まちがってる」と言われ続けるその気持ちの断片を知ったようにも思う。両親に無事を連絡する?目を覚ませ?彼らに罪なき善人たちがかける言葉を、どこか薄っぺらく感じる。信じることをやめるって、そんなに簡単なことなんだろうか?わからない。私はオウムがやっとことを、彼らを許せないけど、それとは別に、わからないと思った。

そしてスマホがない時代だからこそ起きてた出来事も多かった。警察が無理やり公務執行妨害もぎとるシーンとか撮られたら終わりすぎるから、今なら通行人いる道で絶対できないよな。あと住民とか大学生がオウム信者達に対して、スマホ越しじゃなくて対面で反対意見をぶつけるのとかもなんだか平成を感じた。

まだ世の中の情報も不確かで、生きづらくても誰に相談すればいいのかもわからなくて、行き着いた先がオウムだった人もいるんだろう。荒木さんは、希望とか絶望とかの先、「もうここで生きるしかない」という目をたびたびする人だな、とぼんやり思った。
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