akqny

マイ・プライベート・アイダホのakqnyのレビュー・感想・評価

4.5
生い立ちは誰にも選べない。過去から伸びる道は、過去に囚われ続ける限りその先にも分かれ道などなく、一直線に伸びるのみ。その残酷さが印象的だった。

ホームと呼べる場所がある人は幸せだ。マイクにとってもスコットにとってもホームはボブのところだったけれど、青春の時代が終わる時、その居心地の良いホームは往々にして消え去る。なぜなら人は、青春を謳歌した後、みな自問し、自らのルーツ、自らのアイデンティティに向き合うからだ。
マイクは母の記憶を探し、スコットも反抗の対象であった父の死を通して彼と向き合う。結局、ボブを父親同然に慕って集まった不良たちの中で、スコットだけがルーツが違う。帰るべきホームは常にあったから。
マイクは自らのルーツを探すも、分かったのは自分は母を捨て、父親だと思っていたのは兄で、他人の介抱が必要な難病持ちの不良の男娼だということ。そして密かに想いを寄せていた親友とはそれ以上の関係になれないということ。その事実の重さは彼をズタボロにし、結局自分とはなんたるかを知ることができるのは、同じ孤独を持った仲間と集い、目の前の短期的な快楽に身を委ねることでしかない。過去を見つめるほどに今の暮らしから逃れられない。

過去から未来に続く道はアイダホの何もない一本道で、いつ倒れるかわからない彼が歩くには長過ぎる。拾ってくれたのは多分彼のルーツだろう。

人間は一人では生きられないし、繋がりたくなくても誰かと繋がって生きている。その事実に気づく時、人は自らに向き合い、どう生きるかを自問するのだと思う。



リヴァー・フェニックスとキアヌ・リーヴスというキャスティング、そしてかれらの纏う衣装が最高なんだよな、、
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