よ

マイ・プライベート・アイダホのよのレビュー・感想・評価

3.4
リバー・フェニックスという人がたしかに存在していて、容姿・実力ともに評価されていた。
幼少期の辛い経験から、傷を抱えたような繊細な演技がとりわけ上手かった。
脚本にも意見できるほど、役の理解にも秀でていた。
そして、そうした才能の全てが、映画を愛するたくさんの人々に愛されていた。

自分が生まれる前そういう時代がたしかに在ったということを、中学生の私はWikipediaやNAVERまとめ(なんて古代的な響きだ)を読んで知った。
なかば御伽話のようなもので、彼は文字通り伝説だった。そんな事実ほんとは無かったんですと言われても信じてしまいそうなほどの短いキャリア、異常な名声、整った顔立ちだった。
憧れだった。私は『スタンド・バイ・ミー』以外まともに観たこともないくせに、彼の白黒写真をスマホの待ち受けにしていた時期がある。

その彼が『マイ・プライベート・アイダホ』で真価を発揮していることは、三十秒も観ていれば分かる。画面に映りこんだ瞬間に分かる。
リバー・フェニックスだ、と思った。特徴的な鼻の形と鋭い目、想像したとおりの危うい雰囲気、私たちを惹きつけて離さない何か。
居たんだな。それが率直な感想だった。実在したんだな、と。
このスクリーンの向こう、ビデオカメラの前に、三十余年前たしかに立っていて、これほどのオーラを放っていた。その事実が、切りつけるような生々しい演技をとおしてひしひしと伝わってきた。

こんな役者が居たのか。
彼が伝説になるのは当たり前だ。早逝したからでも、有名だったからでもない。
私たちの失ったものが大きすぎた。それだけだ。
よ