cheeeezm

マイ・プライベート・アイダホのcheeeezmのレビュー・感想・評価

4.5
2020.46作目。


最後の最後までは5.0だったんだけどなぁ……。全てが好みだった、ラストの展開以外。

マイクを囲う何もかもが悪い方に転がっていく。それでもさすがガス・ヴァン・サントと言うべきか、多くは語らず、それでも美しく。
友情で終わらせられればよかった。思慕を胸の奥で秘めさせておけばよかった。それでもきっとマイクにその選択はできなかった。家族を失い、自分の身を売り、惨めさを痛感する度に強制的に眠らせられる。もしかしたら次眠った時は、目覚められないかもしれない。彼の奥にある漠然とした危機感が、告白に繋がったのかもしれない。

売春というか、男娼の制度は見聞として知ってはいるけど、体験したことは無い。それでもスコットのようにあくまでそれは商売で、自分のプライベートとは別離しているという考え方も理解はできる。マイクもきっと、理解できたから彼の恋路を阻めなかったのだろう。
それでもやるせないよ……。物悲しくて、その寂寥に寄り添うような情景にまた涙が出た。スコットの道もわかるのだけど、冒頭からラストまでマイクの道には誰もいないのが寂しい。途中スコットと一緒にいたのに、彼は景色しか見てくれなかった。

私がラストに少し難色を示しているのは、眠りに落ちたマイクが追い剥ぎに合い、そのままエンドクレジットが流れて欲しかったから。寂しいまま行ってほしかった感はある。
それでも監督的には、最後の最後で少しだけ彼が救われることをメッセージとしたかったのだろう。名作であることに変わりはない。

セックスの撮り方、結構好き。音の変わり目でカットが変わる。そこに深いメッセージ性を求めているわけではなく、ただ情欲と商売の需要と供給がそこにあるだけ。または性欲と恋愛。
elephantをこの前に観たのだけど、ガス・ヴァン・サント監督は人間を撮るけど、そこに監督の強い主張を感じさせないのかな、と思った。結構好き。監督の自我より、ただそこに生きている悲しさが溢れる映画という印象が受けられてよかった。
場所毎に切り替わる演出も好みだったな。BGMの存在感の薄さというか、使い所も好きだった。

リヴァー・フェニックスはめちゃくちゃ美しい。マイクとスコットはお互いに思いあっているけど、形が違ったから本心で話し合えなかったというメッセージにリヴァーとキアヌの造形と演技がとともマッチしていたように思う。

何度でも観たい。
cheeeezm

cheeeezm