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坊ちゃん記者のsayuriasamaのレビュー・感想・評価

坊ちゃん記者(1955年製作の映画)
3.6
いろんなシチュエーションの小林桂樹が見られるのは楽しいけど、ストーリーの流れは色々全部混ぜの迷作

小林桂樹出演・幻の日活作品ということで、そこそこ楽しみにしていたものの、まっすぐでキュートな小林桂樹()をずっと見つめる映画として楽しむことにして専念した作品。

まず、良いところは後の東宝社長シリーズにも継承される、母親と同居しているマザコン気味な青年像がここでも発揮されていて、その点は安定の面白さが出ていた。母親が息子の書いた記事をどんなに小さくてもスクラップする姿は温かさを感じる。そして、数々の情に厚く清潔感あふれる行動は良かったのだが…
いかんせん、「記者」なのに私立探偵か警察官並みのバイタリティーで取材だったかどうか忘れてしまうレベルの荒らし方はご都合主義派からとしてもさすがにそりゃないぜ〜と言わざるを得ない。そして、記事は他社にすっぱ抜かれて終了とは…坊っちゃんだとしてもちょっとあり得なさ過ぎて。

そして、やはりロマンスパートがちぐはぐしていて(小声)一応は伏線回収できるものの、スムーズでなくてテンポが落ちる。
母親と離れて暮らすタクシー運転手の父とその娘のエピソードからのクライマックスはハートウォーミングかつ、高品格との泥仕合は見ごたえがあって良かった。しかし、二人の女性のとロマンスが挟まれた前半のもったりした流れがつかみにくくてまあ、娯楽映画だよなぁと。

東宝の清潔感だけでなく、日活クライムアクション味あふれるラストの演出が珍しいところに価値を見出す作品。

余談
アステロイドシティの後で観たのですが、本作こそ、正真正銘の1955年製作の映画でした。日米の違いがあれど、戦後の雰囲気はこちらのほうが(当たり前ですが)濃い。両作品になんとなく似たような音楽が流れていた気がするのですが、空耳かなあ。
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