当時、この題材を描くことの重さは計り知れないと思った。
三船敏郎が演じる阿南陸将のぐっと言葉を飲み込む表情や、板挟みになる苦悩みたいなものは言葉少なであっても伝わってきた。
あと黒沢年男が演じる畑中少佐（2015年版は松坂桃李）の気迫、陸軍内部の熱量みたいなものは圧倒されるものがあった。それだけ当時性があったのかもしれない。
まさに「長い1日」を描いている。続く閣議も終盤のなか、これからの日本を憂う心理的な不安を飲み込む以上の疲労も描かれている。合意、手続き、詔書の作成といった牛歩ともいえるずっしりと重い政府関係者たちの時間と、陸軍将校たちが走り回る時間が並列で描かれて、時間の長さという感覚の対比も面白かった。
