ひげしゃちょー

日本のいちばん長い日のひげしゃちょーのレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)
5.0
重厚なドキュメンタリータッチの素晴らしい戦争映画に仕上がっている。演出もさることながら橋本忍の緻密な脚本に寄るところが大きいだろう。 教科書では2行で終わるのに実際はこんなにも長い一日だったのかと考えさせられる。考えてみたら当たり前の話なんだけど。 志村喬演じる情報局総裁の「あらゆる手続きが必要である…儀式と言った方が正しいかもしれないがね。日本帝国の葬式だからね。」という台詞と真っ正面から描かない昭和天皇の姿が印象的。 会議室で行われる日本の決められない政治家達の閣僚会議もイラついたが、もう決まったことに対して駄々っ子のように子供じみたクーデターを起こした陸軍青年将校達にもイラついた。 それでも、一国家が敗北を受け入れるってことの重大さがよく伝わった。負けたまま戦争を終わらせるってことは自分達の間違いを認めるってことだから、つまり戦死した人達はただの死に損になってしまうということだから。 戦争に巻き込まれた国民ではなく戦争を推し進めてきた政府側が自分達の手で戦争を終わらせなければならないという視点は初めて観るタイプの戦争映画。 三船敏郎の陸軍大臣の毅然とした態度と黒沢年男の青年将校の狂気っぷりが冴え渡った。 しかし、決められない政治ということも含めて『シン・ゴジラ』に共通するものがいくつかあった。 間違いなくオールタイムベスト級の映画だ。 あまり期待もできないがリメイクも観てみたい。