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日本のいちばん長い日のYOUのレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)
3.9
岡本喜八が監督を務めた、1967年公開の歴史サスペンス。

・各々の日本人としての葛藤をただただ淡々と捉えていくだけの157分。『日本のいちばん長い日』という実に秀逸なタイトル同様、過度な肩入れも不必要な内面描写も一切無いこの即物的な語り口こそが、戦争の持つ不条理性・暴力性をむしろ浮き彫りにしている。

・一本の群像劇としても実にハイクオリティ。これだけのパートが並列されているにも関わらず話の本筋を見失うことのない周到な作り。

・役者陣による「熱演」というよりも「力演」の迫力にも終始圧倒される。

ここ数本は尺も短めのライトな作品を続けて観ておりましたが、たまにはこういう「尺もテーマもズッシリと重たい作品」も良いですね。しかしその「重たさ」に飽きや疲労を感じさせる隙は一ミリも無く、むしろ話が進むに連れてズルズルと引き込まれていきました。日本の戦争映画といえば特に近年は兵士や民間人の視点から戦争の「悲劇性」にフォーカスしたヒューマンドラマが大半を占めると思うのですが、ある意味その真逆とも言える極めて温度の低い即物的な演出からは戦争の不条理性・暴力性のみならず「話が通じなければ動かしようもない現実」という奥行きすらもたらせています。だからこそ本作は今を生きる若い世代にとっても大いに観る意義のある作品ですし、こうして作品から受けたショックを自分なりに咀嚼し考えを巡らせるという体験性もまた映画の持つ大きな役割だと思います。という事で、やはりこれはあらゆる意味で「今自分は映画を観ている!」と常に意識させる作品でございました。リメイク版も気になる!




























































個人的には、主要登場人物15人の写真が配された公開時ポスターの方がオールスター映画感があって好き。『オリエント急行殺人事件』(1974)然り、大人数のバストアップ写真をただ並べただけのポスターってどうしてあんなに良いんでしょうね。「アベンジャーズ」や「ワイスピ」もせっかくの超オールスター映画なんですから、イナバ物置形式は一旦止めてこっちを採用していただけないものですかね。
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