とむ

日本のいちばん長い日のとむのレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)
4.8
今のところ、自分がこれまで鑑賞してきた全映画の中で最も好きな作品。数え切れないくらい見てきたし、今後も何度となく見返していきたいと考えている。

何よりも魅せられるのが、ベテランから若手までずらりと並んだ昭和の名優たちの重厚かつ熱のこもった演技。圧倒的な迫力と威厳をそなえる三船敏郎や島田正吾はこの映画を見て大好きな俳優になった。
脇役ながら鼻にかかっただみ声と癖のある演技で戯画的な存在感を漂わせる伊藤雄之助もいい。

日本の敗戦を冷静に見据えた立場で三船と真っ向から激論をたたかわせる山村聰、決起の首謀者の一人として狂気を感じさせるほどの熱血ぶりで暴走する黒沢年男、ふがふがした年寄りくさい発声ながら、ぎらついた目つきと声をからしての絶叫で首相の下に襲撃をかける天本英世など、一人一人語っていたらきりがないくらいにどの俳優もそれぞれに魅力を放っている。
各々の状況を同時進行でテンポよく見せていく群像劇にも終始引き込まれてしまう。
やはり実際に戦争を経験し、たくさんの切実な思いを胸に刻んでいる世代の俳優たちだからこそ、これほどの熱演をやり遂げることができたのだろう。

心中の思惑はどうあれ、天皇や閣僚、軍人たち、それに無名の国民に至るまで当時のすべての人が、目前に迫った日本という国の存亡を一心に思い続けていた。
その先人たちの国への強い気持ちや込められた平和へのメッセージを、この映画を見ることで思い出し、噛みしめていきたい。
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