トランティニャン

日本のいちばん長い日のトランティニャンのレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)
4.5
8月15日に玉音放送が流れるまでの24時間を追った、緊張感みなぎる傑作。監督・岡本喜八、脚本・橋本忍。そして男汁だくだくの豪華俳優陣――長尺でも安定感が段違いだ。

当時首相の鈴木貫太郎(笠智衆)、本土徹底抗戦を訴える陸軍大臣阿南(三船敏郎)、そして国体護持のためにクーデターを画策する青年将校(黒沢年男)、そして昭和天皇――それぞれがそれぞれの立場で国を想い過ぎるがゆえに、意見は平行線を辿り続け、その間にも下界では被害が苛烈さを増してゆく……。

特に強烈なインパクトを残すのが、ひたすら肩周りにびっしりと汗を染み込ませながら皇居周辺を行き来する青年将校たち。彼らの国を想う気持ちは純粋そのものなんだろうけど、純粋過ぎるゆえにその近視眼っぷりは見るに堪えない。天皇を守ることが任務の近衛兵たちが、玉音放送を阻止するために、宮内庁に銃を向けるのだ――とんでもない妄執だ。結局彼らにとって天皇は絶対であり、絶対ではなかった。よく、戦況が悪化しないうちにどうして戦争を終わらせなかったのか、という声は多い。自分もそう思う。けれども、時の為政者たちは終わらせることの難しさを誰もが知っていた。そして事実、終わらせることはとんでもなく難しかった。これを見るとそう思わざるを得ない。玉音放送によって戦争がすんなり終わったと勘違いしていた自分のような人間に、是非見て欲しい激動の昭和史。