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ハンナとその姉妹のtoのレビュー・感想・評価

ハンナとその姉妹(1986年製作の映画)
4.6
素晴らしかった。一度レンタル取り寄せて再生不能で返却していたので観てみたい気持ちが高かったことを抜きにしても、私はこういう映画が好きです。あらためてそう感じることができたウディ作品33作目。個人的には「アニー・ホール」を観て、ウディ・アレン作品を見始めた時を重ねて思い出しました。

三姉妹とその男たちを巡るストーリー展開、いくつかのインストラクションに区分けされている構成。それぞれで登場人物それぞれの心境がナレーションされて進行していきます。いつもの会話劇はつづき、コメディなのかと思える人間ドラマ。結局どこへ向かうのかな、と美しいニューヨークの街並み、建物、空気感と一緒に三姉妹の恋と愛の行方。本屋、レコード店、カフェに三姉妹のファッション、インテリアも音楽も相変わらず素敵、惚れ惚れです。
そのうち本当にニューヨークへ行ってしまいそうなほど魅力的に見えました。

一番はウディ演じる病気恐怖症のミッキーが人生に絶望して求めた答えが見つからず自殺しようとしてもできなくて歩き疲れて入った映画館でのシーン。


神はいなくても人は生きて死ぬだけだ
人生を楽しめばいいんだよ
何も深刻に考える事はない
だから暗い人生を送ることはやめて
ないものねだりの答えを求めず命の続く限り楽しむんだ
その後の事は誰も知っちゃいない
そんなあやふやな事で悩まなくていい
今が大事なんだ



もっと早く観たかったけど、きっと私にはこのタイミングだったのかなとか考えて。なんだかウディからのメッセージに涙、心打たれました。それでも人は生きていく。落ち込んだらまた観たくなるかもしれないと感じました。

また何度か出てくるハンナ姉妹の実家でのパーティーシーン。素敵です。素敵にしあわせに見える誰しもに何かしらがある。不安だったり、浮気心、願っても叶わないこと、秘密に小さな嫉妬に軽蔑、見栄などなど。けれどもステージではそれは見えないし、見せないように暮らしている。そうやって体裁を整えて暮らしている上で成り立っているとっても不安定なもの。家族だから容赦なしに感情的にもなるし、思ってもない不幸も幸せな出来事も起きる。それを三姉妹の長女ハンナを中心に描き表していて、滑稽さ、馬鹿馬鹿しさ含めて愛すべき人間像が描かれていたことが何よりも良かったかな。
こちらの作品、私の近くにこれからもいて欲しい作品になりました。私のなかでは最高な傑作かもです。

しかしアカデミー賞はじめいろいろ取っているのに手に入れづらかったのはなぜなのかしら?買うべきということかしら?
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