のちにSF映画・ドラマで名を馳せるマイケル・アンダーソンの出世作だが、長いせいか、映画としてちゃんと観きったことがなかった作品。
デヴィッド・ニーヴンとの出会いは、テレビの「007/カジノ・ロワイヤル(1967)」の吹替え放映だが、中村正氏の声音が嵌まった英国紳士ぶりに魅了されてしまった。本作でも、その名のとおり、“霧”の如くにつかみどころのない主人公を難なく演じていて飽きさせない。そして、お供のパスパルトゥー役のカルティンフラスは見事な儲け役。初期の悪チャップリンを思わせるヴォードヴィリャン的な怪演は、ジャッキー・チェンがリメイクしたかったのもうなづける。とどめのヒロインは、未だ初々しい頃のシャーリー・マクレーンなんだから、長いと敬遠してはいけなかったね。
どの役に誰が扮しているか、大人になってそのうまみが判るようになってから観ると、感慨もひとしおかな。