カント

80日間世界一周のカントのレビュー・感想・評価

80日間世界一周(1956年製作の映画)
4.0
イギリス1956年制作。空想冒険活劇の名作古典。
映画音楽「80日間世界一周」は名曲中の名曲!
私の口笛レパートリーで不動の人気No.1(^o^)

【イギリスの階級制度の考察】
昨日、ロンドン大学の元・評議員の方と懇談した折りに、イギリスには日本人には窺(ウカガ)い知れない階級制度があると伺いました。
①上流階級(アッパークラス)
②中流階級(ミドルクラス)
③労働者階級(ワーキングクラス)
階級が違えば生活も言葉も、住む世界自体が違います。
特に言葉は、上流階級の使うクイーンズと、労働者階級の使うコックニーと大違い!
東京で例えると成城マダムと錦糸町の肉労オヤジと、言葉が全く違う感じですね。
(日本は差別意識は少ないですが富裕層、中間層、貧困層の差はあります)
※アメリカ人のアメリカ語は、イギリスでは言葉的に中流階級以下だそうです。

イギリス映画「リトル・ダンサー」では、労働者の親父が“労働者階級のスポーツ”のボクシングを習わせたいのに、主人公の少年は上流階級の習い事バレーに興味を持って踊ります。
親父の反対の最大の理由は“階級の違い”だったのです。
「シャーロック・ホームズ」は、いつも助手のワトソン君に(偉そうだなー)と思ってましたが、ホームズは中流階級の中でも『上位中流階級』ワトソンは、それ以下(中位か下位の)中流階級だったのでしょう。
明らかに階級には序列が存在します。

昨年、話題沸騰だったスパイ映画「キングスマン」は、完璧な上流階級(アッパークラス)で、本作「80日間世界一周」のフォグ氏と同じ『セヴィルロー通り』の出自。
キングスマンが、ダウンタウンの労働者階級のガキ共を“屁”とも思わないのは武闘の実力以前に階級的な差別意識です。
「ハリーポッター」は、逆パターンで…人間界では虐げられていても、魔法界では上流階級!
階級意識の権化ドラコは、ハーマイオニーを『汚れた血』と敵視しますが…ホグワーツ魔法学校自体が基本、上流階級の為の学校なのです。
いずれの階級にせよ…
一応は、それぞれの立場で!
イギリス国家に寄与しているのですね(´▽`)ノ

【ここからレビュー】
1872年のロンドン。
サヴィルローの英国紳士フォグ氏。
少々、マイルールを遵守し過ぎて人使いの荒さが玉に瑕。

フォグ氏の参加する上流階級の社交クラブで話題になっていたのは、最近イングランド銀行から新札で5万5000£の大金を奪った銀行強盗の事。
「もう銀行強盗もヨーロッパの方へ逃げたでしょうな」
「そうですなぁ…今や交通網も整備されて、80日間で世界一周できますよ」…とフォグ氏。

『80日間で!?』

出来ない方に5000£賭ける!
社交クラブの一同は、私も!私も!!と。

賭けに乗ったフォグ氏は、全く動揺せず、新人執事のパスパルトゥーと共に世界一周の旅へ!
中流階級の執事パスパルトゥーは、C調で、女に弱くて、何げに芸達者☆
フォグ氏が、いかなる時も紳士らしく振る舞うのに対して、パスパルトゥーのドタバタが楽しい。
フォグ氏が持っていくのは2枚のシャツと靴下3足。そして“新札”の£紙幣。
パスパルトゥーに2万£を入れたバッグを託して、いざ出発!

トーマス・クック旅行社の手配でマルセイユ→ボンベイ→香港→横浜→サンフランシスコの旅程。

早速、不慮の事態(>_<)
マルセイユへの汽車が不通で、再開に1週間もかかる。
フォグ氏の選んだ手段は!
気球で空をひとっ飛び!!
ノートルダムのガーゴイルも、不思議そうに気球を眺めている。
ライン川沿い、ドイツの古城を見下ろしながらお食事。

偏西風に乗ってアルプス山脈を超えたと思ったら…
超えたのはピレネー山脈だった。
たどり着いたのはスペイン。

そしてフォグ氏と執事パスパルトゥーの2人を追うフォックス刑事。
彼は、2人を銀行強盗と勘違いして追っていた!

スペイン、マルセイユ、
ボンベイ、ラングーン(ヤンゴン)
香港、横浜(鎌倉?)、サンフランシスコと、2人の旅は続く。
※寄港地にイギリスの植民地が多いのは、世界中に大英帝国の支配力の及ぶ事を誇示したかったからでしょうか?
それともイギリスの顔が利くから撮影しやすかっただけ?
各地の、エキストラが物凄い人数です。

3時間越えの長い映画でしたが、
彼らと一緒に世界に旅立ちましょう(^o^)
カント

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