このレビューはネタバレを含みます
こんなに美しい物語があっていいのだろうか
フォレスト・ガンプと共に振り返る
偉大なるアメリカの歴史
よくあるアメリカ讃歌かと思ったけれど
作り手の視線はかなり冷静で
アメリカの歴史を皮肉的に楽しく演出していた。
フォレストのような人はどんな場所にいても
花を咲かせ続けるだろう。
それだけに終盤で子どもの知性を心配して初めて顔を曇らせるフォレストに絶句してしまった。
「バカって言う方がバカなんだ」
彼はこれまでどんな気持ちで
このセリフを軽やかに吐き続けたんだろう。
劇中一切描かれない彼の苦悩を一瞬で魅せた、
あまりにも素晴らしい演出と芝居だった。
ジェニーを批判する声もたくさん見たけれど
正直ジェニーの方に感情移入してしまった。
誠実さと実直さであそこまで次々と名声を受ける
人が側にいて、屈託なく自分に愛を注いできたら
私なら、その幸運が恐ろしくて逃げてしまう。
多分ジェニーはきっと父親から虐待を受けていてどんなにフォレストが愛を注いでもその記憶が彼女の人生に付き纏い、フォレストと一緒になりたいけれど、汚い自分が見合わないことを許せなかったんじゃないだろうか。
それはまた同様に一切描かれないけれど
あの家の前で座り込むカットや
わざわざブルドーザーで破壊する一幕から、
フォレストだけには話したんだろうと思った。
徹頭徹尾フォレストを美しく描くことで
人生の立ち行かなさ、生きる難しさをも内包した
人生讃歌、人間賛歌の素晴らしい話だった。