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恋におちてのfallenleavesのレビュー・感想・評価

恋におちて(1984年製作の映画)
3.8
電車で偶然会ったふたりが一目惚れ、互いに結婚している身でありながら、不倫へ足を踏み入れる、というプロットだけ観ると大変ありふれた映画で、事実映画自体の持つパンチは弱いように感じます。しかし、主役のカップルをロバート・デ・ニーロ&メリル・ストリープが演じていることがこの映画を特別なものにしています。世にも恐ろしい「デ・ニーロ・アプローチ」で知られ、『タクシー・ドライバー』のトラヴィス、『キング・オブ・コメディ』のルパート・パプキンなどアクの強すぎる役柄を次々と演じてきたデ・ニーロ。彼が今作で演じたのは「若干奥手な、普通の妻帯者」です。メリル・ストリープとプラトニックな逢瀬を重ね、意を決して関係を結ぼうとする場面では、不倫の決心がつかないストリープに断られてしまう。家族を捨てて、不倫相手を取ったハーヴェイ・カイテル演じる同僚を横目に、デ・ニーロはストリープとの関係をうまく詰められないでいます。彼が妻に詰問され、不倫を告白する場面でも「もう終わったんだ、彼女とは何もなかった」と煮えきらない態度。妻の返す「もっと悪いわ」という言葉とともに見舞われる平手打ちが印象的です。
デイヴ・グルーシンが音楽を担当、彼の代表作「マウンテン・ダンス」が繰り返し流れます。不倫を扱いながらも、極めてプラトニックで、汚さやドロドロがあまり感じられない本作に、爽やかな透明感あるフュージョン・サウンドがフィットしています。この映画のために作られた曲ではないのに、実にピッタリです。
ちなみに題名『恋におちて』でわかるとおり、この映画は八〇年代の大ヒットドラマ『金曜日の妻たちへIII 恋におちて』の参照元となっていたのには驚きました。デ・ニーロ&ストリープから奥田瑛二&森山良子へ、ということらしく……。
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