ろく

魚影の群れのろくのレビュー・感想・評価

魚影の群れ(1983年製作の映画)
2.7
最後の抒情派、相米慎二ウィーク④

僕は正直乗れず。

相米の良さがとにかく「文脈からの破綻」であり「映画を映画でしか語らない」ことだと思っているのにこの映画はそこが弱い。前のレビューで挙げた「夏の庭」も僕にとって評価低いのだけど、どちらも脚本は田中陽造。「ツゥゴイネルワイゼン」や「陽炎座」は大好きなんだけど。どうも相米とのタッグは苦手かもしれないとしみじみ(そういえば「セーラー服と機関銃」もだ)。

また出てくる俳優が「緒形拳」に「夏目雅子」と昭和の映画大スターなんでこれでもかで演技するんだけど(佐藤浩市なんかかわいいものだ)、相米は演技を出来ないもののほうがいい感じに撮れるんではないかと勝手に思っている。ちょっと「演技どや」が僕は苦手なのかもしれない。

そして最後のベタさに鼻白んでしまった。それでは相米が撮る意味がない。こんなのは野村芳太郎や山田洋二が撮ればいいのだよ(最近だったら瀬々敬久)。まあそうなるよねからそうだよねの展開なんで僕は好きでない。

それでも「相米の映画は意味が解らない」という文句に対し、「ベタだってとれるんだよ」という相米の解答なのかもしれないと観ていて思った。たしかにこの前って「ションベンライダー」に「セーラー服と機関銃」だからなぁ。でもこれで懲りたのか(それともやはり少女が撮りたかったのか)その後はあの大傑作「台風クラブ」を撮る。僕は「言葉で語れない=だから見るしかない」相米映画のが好きだ。
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