半兵衛

処刑遊戯の半兵衛のレビュー・感想・評価

処刑遊戯(1979年製作の映画)
3.5
最初に見たときは前の二作と違いシリアスな世界観、クールな松田優作の演技に戸惑いを隠せないまま見終わった印象があったが、今見直すと70年代アクションの真っ只中で生きた優作が新たな世界へ飛び出すために挑戦しているように感じ取れる。

実際この作品以降『野獣死すべし』『ヨコハマBJブルース』とお客さんが期待するB級アクションのノリを捨てたアクション映画に出演し、そして『ブラック・レイン』まで正統派のアクションに戻ることはなかった。この作品で出会った丸山昇一とずっとタッグを組むことになったのも、おそらく自分に無い世界を持つ彼の脚本を自分の演技に取り込もうとしていたのではと邪推する。

序盤優作が拷問されたり、一夜を共にした女が組織に拉致され脅されたりと緊迫した状況が続いているはずなのにあんまり劇中のサスペンスとして活かされていなかったり(優作が狙撃の仕事に乗り気ではないのに家に帰したり、怪我した右手が回復するまで待っていたりと拷問した意味がなくなっている)、ヒロインのりりィが今一つ魅力がなかったり、中盤から話のスケールが無駄に大きくなったりとマイナスポイントが目立つものの、ラスト前の緊張みなぎるアクションシーンがかっこいいので見終わったとき満足感は残る。長回しのなか敵が色々なところから出てきて、そしてそれを優作が華麗に倒していく姿は遊戯シリーズの集大成と言えるかも。

あと青木義朗扮する殺し屋に「前にどこかで一度…」と聞かれた優作が、「生まれる前に一度」と返すところは結構好きだったりする。
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