とむ

ゴジラのとむのレビュー・感想・評価

ゴジラ(1954年製作の映画)
4.3
水爆実験によって長い沈黙から目覚めさせられたゴジラが、東京の街を舞台に暴虐の限りを尽くすという怪獣映画の範疇を超えて、日本人の原水爆に対する恐怖、強大な破壊力を持つ兵器を生み出しそれを使用することの愚かさや悲しみを描いている。

ゴジラによって街が破壊され人々が命を落とす場面でも、特に強く印象に残る描写が二つある。銀座に来襲したゴジラの猛撃に巻き込まれる幼子の母親。ゴジラの進撃を鉄塔の上で実況中継するアナウンサー。共に死を目前にしても最期まで気丈に振る舞い抜く。その悲壮さが胸に迫ってくる。

悲痛で沈鬱な余韻が広がる最後の展開には胸が締めつけられ、涙が出そうだった。水爆の脅威がまだリアリティーのある時代だったからこそこれほどまでにシリアスでメッセージ性の強い作品が生まれたのだろう。込められた思いの切実さや重々しさに後のゴジラシリーズが肩を並べられるとは思えない。原点にして孤高の名作だ。
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