天の怒りか地の声か、はたまた人の悲しみか。
重要なのは、本作が昭和34年(戦後9年)に公開されたという事実だ。
当時の観客にとって火の海と化す東京、生き別れ死に別れ故郷から焼け出される人々の姿は10年前の現実に他ならない。
「幸福に暮らせ」という芹沢博士の遺言は、戦争を生き残った観客の脳裏に未だ焼き付いて離れない親愛な死者たちの声を象徴していただろう。
今から見ればチープ極まりない特撮だが、祖父たちの苦労を偲べば涙を禁じえない。
伊福部昭が作曲した不滅のテーマは人間の愚かさに対する大自然の警鐘とも聞こえるが、戦争の不条理や世界の不完全性に対する人間の声涙倶に下る絶叫の抗議にも聞こえる。