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阿修羅のごとくのたとのレビュー・感想・評価

阿修羅のごとく(2003年製作の映画)
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向田邦子脚本ドラマ『阿修羅のごとく』の映画化作品。後に書籍化、舞台化される。本作での四姉妹の配役は上から大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子。
『外には仁義礼智信を掲げるかに見えるが、内には猜疑心が強』い〈阿修羅のごとく〉内に秘めた四姉妹の思惑、家族だからこその愛憎が交錯し、さらにそこに四姉妹の連れ合いや関係者も多重に絡み合う。
"四姉妹もの"と言えばルイーザ・メイ・オルコット『若草物語』、谷崎潤一郎『細雪』が思い浮かぶが、これらの作品は姉妹の結婚に主眼が置かれていた。もちろん本作も一つの話題ではあるが、四姉妹全員の結婚は起承転結の承の部分でしかない。本作の特色の一つには結婚したからこそ生じる人間関係が挙げられる。物語の端緒は四姉妹の父親の不倫であり、夫を失くして長い長女による妻ある男との不倫、夫に不倫されている次女、無名のボクサーに浮気されている四女(後に子どもが出来て結婚するが、試合の後遺症で病床に臥せる)。このような背景を持った登場人物だが、ある日、どうも我が家の事情を表してるらしい投書が新聞に掲載される。誰が投書したのか分からぬまま事件は相次ぐ。その事件によって関係性、日常生活はどのように歪んで行くか。長女大竹しのぶと桃井かおり、次女黒木瞳と木村佳乃の修羅場なんて特に見物だ。
ラストシーン、四姉妹は新聞の投書主が亡くなった母親であることを発見する。男は自由にやっていて、女はそれに堪えていた、だけでなく男は女の手のひらの上で転がされていたことが判るシーンだが、男はみな縁側で将棋なんてやってる。まさに蚊帳の外。

※是枝裕和監督は『海街diary』で四姉妹を撮ったが、今年2024年に本作をリメイクして同様に四姉妹を撮るようで配役は宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すず。

※谷崎潤一郎『細雪』では題名が示すように三女雪子が作者による寵愛を受けており、その雪子と相反するように四女妙子の人物像が設定されていた。本作もそれに倣ってか、三女が一番円満に落ち着き、四女への反発も描かれていた。
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