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カリスマのteramovoのレビュー・感想・評価

カリスマ(1999年製作の映画)
3.9
掴めそうで分からない。そんな映画だった。

「世界の法則を回復せよ」

私はこれを「自然界における人間の立ち位置を改めろ。」というメッセージに感じた。
人工的に植えた木によって死んでしまった森を回復させようとする。木に毒を撒いて死滅させ、新たな森を造ろうとする。生態系を荒らしながら、人々はその中で利害関係を作り、ズレを生み衝突する。その中で藪池は焼かれ、死に物狂いでカリスマの木に寄り掛かる。カリスマは細く弱々しい木だ。そんな木に助けを求めようとした。この映画はカリスマの元に平等である。殺意の源泉は全てカリスマにあった。
「あんたがカリスマだよ。」
桐山が藪池にこんな台詞を吐く。藪池は最後まで誰にとっても曖昧な立場を取り続けた。大杉漣が藪池に「どっちの味方なんだよ」と尋ねると、「どっちの味方でもない」と答える。心底カリスマを植物を愛していたに違いない。誰よりも自然の摂理を理解し、ニュートラルな価値観を大切にしていた。

良かったシーンはいっぱいある。キノコでハイになる役所広司、滑り台を楽しそうに滑る姿が可愛い。第一カリスマでの森林保全団体と桐山の戦い。殺陣で使われるようなハンディカメラでのドリーショット、藪池がきてから俯瞰で長回し。映像表現の静と動を緊迫感のあるシーンに混ぜ込む勇気。感情的であるはずのシーンが説明的である。映画だからできると思いました。カリスマをゲットして助手席からのパン。あんな効果的なの見たことない。ニンゲン合格の時も思ったが、簡単なカメラワークを効果的に使うのが上手い。林淳一郎さんの撮影記に映像の色味の話と6ヶ所のCG合成とCGを使ってはいけない境界線の話をされていた。

生きることと殺すことは同じ力が働いていた。
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