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カリスマのtakaのレビュー・感想・評価

カリスマ(1999年製作の映画)
4.5
初めて見たときは、前半のコメディチックな音楽と森の不気味さのミスマッチが笑えて楽しく、後半にかけて不可解さが増し、意味がわからなくなってしまった。しかし、何やら引きつけられるものがあり、それをどうしても探りたくなり、3回見てようやく自分の中でこの映画を理解できたような気がする。
主人公は「空」または「不在者」として象徴的に描かれる(低音のBGMが流れている時は現実世界ではないだろう、そういった時間や空間とは異なる世界に行き来している)。
仏教的世界観とキリスト教的世界観、はたまた青年が象徴する国家神道的世界観や、現代的な科学的世界観がそれぞれ交錯し、それぞれの世界の法則を回復させようとする。

この映画は反戦や警鐘として捉えると自分には理解が難しい。主人公の言葉にもある通り、あるがまま、そのままを描いているように見るのが良いように思う。
カリスマはカリスマ自体に存在する価値ではなく、特定の人間が勝手に見出すものだ。森があるのではなく、ただそこに木があるだけであり、集団があるのではなく、そこに人がいるだけである。
私にとって帰属集団と呼べるようなコミュニティはない。それは多くの日本人にも当てはまるのではないだろうか。それぞれの正しさが存在し、それら全てを尊重せよという社会の要請に四苦八苦している。その苦悩がこの映画に惹きつけられる理由ではないかと思う。
だからこの映画は日本人の在り方と苦悩そういったテーマで見るのが私にとっては理解しやすいものだった。

最初は気づかなかったが、よくよく見ると影の使い方や絵に引きつけられるものがある。木に謎のペンキ?を塗ったり点滴をしたり、土を口にして吐き出して「死んでる…」と言ったり、そういったシュールな絵が魅力的だと思った。
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