カミツレ

放浪記のカミツレのレビュー・感想・評価

放浪記(1962年製作の映画)
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女流作家・林芙美子さんの自伝的小説の映画化作品。
本作のほかに数々の舞台やテレビドラマ、映画化された作品があることを調べて初めて知った。私は成瀬巳喜男監督の『放浪記』しか観ていないが、素晴らしいの一言。彼の映画は最近何本か続けて観てきたが、どれもこれも時代は違っても女心をうまく捉えており、夢中にさせてくれる。

そして本作で林芙美子さんを演じたのは、成瀬監督作品ではおなじみの高峰秀子さん。彼女の出演されている映画を観るたびに、私は女優・高峰秀子に恋をしてしまっていると感じる。どの作品でも同じ顔はない。演じ分けているというより、毎回その役の人物をただひたすらに生きている、とても魅力的な人だ。

この主人公は貧しく学もないが、きれいごとだけでは生きていけない世の中で『書く』ことを通して常に戦っていた、そんな強い女性。強いながらもユーモアがあり同じ女性として憧れるが、イケメン好きでダメな男に惹かれてしまうという弱点も人間味があって好き。

芙美子の主人である福池貢が特にダメ男なのだが、妙に母性本能くすぐられる部分もあり、「この人ってダメ過ぎだけどかわいいなぁ。なんて俳優さんなのかなぁ」と思っていたら、宝田明さん。知ってる!演技はきちんと観たことはないが若かりし頃これほどまでに美形だったとは!今もシブくてかっこいいですが。そんな発見もあったりで一昔前の作品を観るというのはとてもおもしろい。
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