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十二人の怒れる男のutakoのネタバレレビュー・内容・結末

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

観たくてBlu-rayを購入して観賞。

父親殺害の容疑をかけられた18歳の少年は、有罪か無罪か?12人の男たちがその審議を巡る陪審員制度を題材にした法廷サスペンス。

殺害動機、物的証拠、目撃証言からも少年は明らかに有罪だと誰もが確信する中、陪審員12人中、11人が有罪、1人が無罪を主張する。

「有罪と決めるのは簡単だが、たった数分で人1人の…しかも少年の生死を簡単に決めていいのだろうか?もっと話し合って決めるべきだ」

無罪を主張する男の一言から、証拠を再検証していく白熱した男たちの議論…会話劇がシンプルながら無駄がなく大変面白くて引き込まれました。
その男も無罪を確信している訳ではなく、
証拠に疑わしい点がある以上、有罪には出来ない…と言ったところでその真偽を持ちかけるんですよね。
12人の男たちの職業や個性も様々。紳士的だったり傲慢だったり、思慮深い、短絡的、この人素敵、この人腹立つ、あるあるわかる!と観ているこちら側も興奮しちゃうほど設定と演出が活きまくっていて、推しキャラを探しながら観てました。
後半になるにつれ、有罪を主張する理由を強く持つ者、意固地になる者…雄弁に語る訳ですが、折れそうにない人が眼鏡のくだりで無罪に転じたところは、なかなか胸をすく爽快感すら覚えました。

「人間誰しも間違うことはある」
度々挟まれる台詞ですが、
もっともらしい証拠や他人の証言を深く熟慮せず鵜呑みにしてしまうことの危うさ…その怠慢で1人の人間の人生を狂わせ命をも簡単に奪うことが出来てしまうことの恐ろしさ。
多数意見となれば善しなのか?ホセ・オルテガ「大衆の反逆」で問題提起してることと一緒。法廷に持ち込まれる案件だけに限った話ではないなーと考えさせられた。

94分というコンパクトな時間の作品ではあるけれど、良く練られたシナリオです。それぞれが意見をぶつけ合い相互理解していく様は理想的で胸アツ。観ていて気持ちいいです。
冒頭の法廷シーン、ラスト法廷を後にするシーン以外は場面転換などないのに、密室の中ロングやズームアップを巧みに使い12人の男たちの表情豊かに、バラバラな意見を持った男たちが、緊迫しながら同調していく空気感を味わうことができて全く飽きることがなかった。名作と言われる所以しかと楽しみました。

クリストファー・ノーラン監督が挙げる好きな映画ベスト10のうちの一本で観てみました。
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