マーティン・スコセッシ監督が「沈黙ーサイレンスー」(2015)を作る際に参考にした一本。17世紀に実在したバンサン司祭の慈善活動を追う伝記映画。アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞。
フランスの田舎村に赴任したバンサン神父は、ペスト感染の疑いで閉じ込められた家の娘を救い出す。その行為は、不信心となっていた村人たちや貴族夫人たちからの信望を集め、神父が進める慈善活動への協力の輪が広がっていく。しかし社会の貧困は厳しく活動の維持は困難を極めていく。。。
貧困下の町の様子がリアルに描かれ、バンサン神父の慈善活動に共感できる説得力があった。また、慈善活動の継続には金銭の寄付が必要なことや、患者同士のベッドの奪い合いなど綺麗ごとでは済まない事情も描かれていた。宗教者として、目の前の一人を救うか、リーダーシップで全体を導くかという問題提起も考えさせられるものだった。
しかし本作には致命的な欠陥があって、社会貧困により慈善活動が最大のピンチを迎えたところで、解決を見せずに時代が飛んで閉幕していってしまう。史実に従っているのかもしれないが、一本の映画作品として何らかの落としどころを示してほしかった。
