櫻イミト

ハイ・シエラの櫻イミトのレビュー・感想・評価

ハイ・シエラ(1941年製作の映画)
3.5
ハンフリー・ボガートの初主演作となるギャング映画。監督は「白熱」(1949)のラオール・ウォルシュ。脚本はその後ボガードと名タッグとなる「マルタの鷹」(1941)のジョン・ヒューストン監督。「ハイ・シェラ」とは主人公が惹きつけられる山の名前。

出所した凄腕の強盗犯ロイ・アールは、直ちにロサンゼルスの高級ホテルの強盗計画をスタートする。仲間は頼りない若者2人と彼らが連れて来た女マリー。マリーはロイの人間的な優しさに魅かれていくのだが。。。

大まかなプロットは”犯罪者の破滅”というギャング映画定番のものだが、本作が際立っているのはボガードによる新たなギャング像とカー・アクションだろう。

本作以前の内面性あるギャング像としてはジェームズ・キャグニーの”汚れた顔の天使”キャラが突出していたが、そこに”大人の哀愁”を加えたのが本作のボガードだったと思う。凶悪だが人間味がある複雑な人物造詣は、利口な犬との触れ合いを通して示される。その終幕は「暗黒街の弾痕」(1937)や「夜の人々」(1948)など、ボニー&クライド作品へのオマージュを思わせる。ボガードは本作でギャング映画を閉幕し、同年次作の「マルタの鷹」でフィルム・ノワールの幕を開ける。

※ウォルシュ監督は8年後に本作を、西部劇「死の谷」(1949)としてセルフリメイクする。
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