長靴を吐いたネコ

デビルマンの長靴を吐いたネコのネタバレレビュー・内容・結末

デビルマン(2004年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

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【デビルマン 】 (DVD)
2004年
総合評価 2.4 → ☆2.5

「シナリオ」 (1.0) … 2 → 2
「演出全般」 (1.2) … 2 → 2.4
「心理効果」 (1.5) … 3 → 4.5
「視覚効果」 (1.1) … 3 → 3.3
「音響効果」 (0.9) … 3 → 2.7
「教養/啓発」 (0.8) … 2 → 1.6
「俳優/声優」 (0.7) … 1 → 0.7
「独創性」 (0.8) … 3 → 2.4
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【ストーリー】
黒髪と金髪のホストみたいなニーチャンがデーモンに取り付かれて、いつのまにか地球上にデーモンがはびこって、デーモン狩りとかしながら戦争とかして人類滅亡したあと、黒と金がタイマン。
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【魅力】
・デビルマンのデザイン
・大筋は原作に沿っている
・ちょいキャラのセンス
・ウシくーん!
・あー、俺デーモンになっちゃったよ

【不満】
・主演の演技
・主演の表情
・主演の滑舌の悪さ
・主演とその相方がチャラい
・ストーリーのつなぎがおかしい
・撮影、画像処理共に雑
・人々の動きが不自然

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【少し突っ込んだ感想】
21世紀もまだ始まったばかりだというのに、既に「今世紀最低の映画」という不名誉な評価を受けている名作ですが、まあ、額面通りの言葉で行くなら、話題にも登らないぐらい最低の映画は沢山あるので、その意味でこの映画は少なくとも「弄られる魅力」は持っていると思います。それも立派な才能。
もちろん、映画としての出来栄えは決して良くないのですが、意図してかどうかは別として、それを笑えるレベルまで昇華しているので、その点は評価できます。下手するとこの監督は天才かもしれません。もはや故人ですので、確認するのも難しいのですが。

まあ、個人的に感じたそのへんの魅力(問題点)を挙げておきます。おそらくネットでも散々指摘されているモノばかりだと思いますが。



【突っ込んだ魅力】

『粗い』
主役のロレツの回っていない語りで補足されながら、一応シナリオ自体は一つの流れに沿っているけど、ダイジェスト版みたいに飛び飛びで、しかも結構重要な、中ボスとの決着のシーンとかも平気で飛ばすので、不完全燃焼だったり、初見の人はおそらくストーリーについていけないのではないかと感じました。

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『軽い』
何もかもが軽い、超軽量映画。普通に作ればかなりシリアスになりうるシナリオなんですが、登場人物から演出まで、何もかもが軽すぎて、おそらくどんなシナリオを当てはめても重みを感じないと思われます。

例:主人公がデビルマンに憑依された時の一言「あ~、俺デーモンになっちゃったよ~」
→私が側にいたら思わず「マジかよwちょーヤベェじゃん」と返してしまいそうな軽さ。結構重要なシーンなのですが。なんかいくら台本読ませても覚えれないので、「監督ぅ~、自分型にハメられるの苦手なんで、アリノママの演技でいっちゃっていーすか?w」とか言い始めて、監督が「う~ん、じゃそれでいってみよーか」ってことになって、もう妥協に妥協を重ねてそうなったのでは無いかと思ってしまう。

例:ヒロインが魔女狩りにあったとき、「私は魔女、舐めるな!」とか言いながら包丁持って立ち向かったけど、3秒ぐらいであっさり捕まって「違う…私は魔女じゃない」と泣き言を言い出す。
→そんなキャラなので、その後生首になってても悲しみの欠片すらも感じません。

その他枚挙に暇はありませんが、現代の若者の心情を反映したにしても、あまりにも軽すぎて、ストーリーが成り立たないレベルでした。

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『謎の人選』
ボブサップやコニシキを起用したのは、正直評価できると思います。コニシキは出てきて数秒で死にますけど。その他、混乱の極みに達した街の中で、暴徒と化した石塚みたいな人を含むデブ3人組が、逃げるサラリーマンの上に乗っかってプレス攻撃を加えています。とてもシュールですが、このへんの演出を見て、「ああ、この監督はわざとやってるな」と何となく確信を持つようになりました。

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『農業』
広大な田んぼで稲刈りをする農家のおじさんに、主人公が「手伝いますよ」とか言いながら、二人で鎌を持って稲刈りを始めますが、この時代重機使わない稲刈りはかなり特殊です。知り合いの農業関係の人は「はさがけ天日干し」ぐらいかな、と言っていました。詳しくはわかりませんが、農業を舐めきったようなあの光景は素人目に見てもかなりシュールなものがありました。

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『演技』
主演の演技力が良く問題にされ、大根とか言われていますが、正直、演技と呼べるレベルに達しているかどうかも微妙でした。少なくともこれまで観た中では最低で、素人とかそういう問題ではなく、日常生活レベルで表現力が少なめの人だと思いました。他の映画では素人が起用されて、俳優顔負けの演技することだってありますからね。あと、主役の語りが多いけど、ロレツが回っていない事が多く、聞き取れないとまでは言わないけど、普通なら撮り直しするレベル。もしかして、撮り直しをさんざんした結果なのかもしれませんが。中ボスとの激しい戦闘中も、「アー、アウッ、グフッ」とか、地味な唸り声が聞こえてくるので、激しい映像と相まって凄くシュールでした。喋るときはもちろん棒読み。

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『生首』
ヒロインの生首は、原作で最もショッキングなシーンと言えるかもしれませんが、それにこだわり過ぎたのか、映画では何故かその生首を主役が延々と持ち歩き、教会の台座に置いて思い出のシーンに浸る引っ張りよう。しかし、前述のように何から何まで軽いテンションで進行してきたこの映画では、どんな凄惨なシーンもまったく重みがなく、むしろそのシュールさに笑いがこみ上げてきてしまう。

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『CG』
デビルマンのデザインと変身全般、そして最後の戦闘シーンのクオリティだけはかなり高かったと思います(他は酷いけど)。少なくとも普通に楽しめるレベル。あのデザインが誰のアイデアか知りませんが、もしかしたら、相当なデビルマンファンで、長年練りに練ったアイデアを、今回の実写化に置いて満を持して登場させ、結果があの映画だったのかも?とか想像するとたまりませんね。

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【蛇足】
まあ、何ていうか、散々言われながらも、やはりこの映画は弄られるだけの魅力は持っていると思います。中途半端な秀作よりも、突き抜けた駄作の方が好きですし、その意味で、この愛され映画はもはやDVDすら欲しいレベルです。

新作の実写版「進撃の巨人」と比較引用される事が多い今作ですが、進撃の方はいかんせんセンスが中途半端で、名台詞とかが少ないですね。ただ、あのスーパー銭湯の光景だけは、後世まで語り継がれるインパクトを秘めているかもしれませんが。

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