加登魁修カドカイシュウ

デビルマンの加登魁修カドカイシュウのレビュー・感想・評価

デビルマン(2004年製作の映画)
5.0
この映画を観る際に『世紀の駄作』というバイアスを抜きに観るのは中々難しいのではないのだろうか?
だから、本作を観る時の姿勢は「いっぱい変なとこ見つけるぞ〜!!」となる(見つけるぞ〜!!と意気込まなくてもゴロゴロ転がっていることに、観始めたら気づくんだけどね 笑)。

確かに、この作品粗が目立つ(というよりも、粗で出来ていると言った方がより正確かもしれない)。
本作に対するツッコミ祭りは先人たちが行なっているので、私は良いとこを発信したい。

原作未読であるということをレビュー前に述べておく。だから、俺のデビルマンを汚しやがって...という気持ちにはならず、フラットに観れた。

本作は兎に角一点豪華主義!!
CGデビルマンがカッコイイ(半人半獣ならぬ、半人半デビ状態の時は、兎に角ダサかった)。
結局、本作はCG(最後のデビルマンVSサタン)をみせたかったんだと思う。あそこは、中々迫力があった(まー、でも今観ると、パチンコCRデビルマンのスペシャルリーチの演出のようにもみえてしまうが)。
それと、実写にちょくちょく一瞬だけ挟み込まれる漫画描写!!これは、今でも斬新で、素直におっ!!!と感動した。
以上のように『生の人間』が絡まないシーンはスタイリッシュだった。
ウィキを読むと制作費のほとんどをCGに費やしたっぽいので、その甲斐あり!!!!!

校舎裏で不良に絡まれ、デビルマンの力を使って、ぴょんぴょんと跳び回り、不良をやっつけるアクションシーンは中々良かった。
そのシーンは序盤に出てくるので、アクションシーンは期待が持てるかも...と心踊るんだけど、そこ以外のアクションシーンは.....

本作の最も良いところは、原作未読な人間なら、必ず原作を読みたくなるところだと思う。
世紀の駄作というレッテルを貼られているだけあって、確かに酷いんだけど、でも、メッセージはしっかりと伝わってきた。
デーモンに感染した人間=悪ではなく、デーモンの中には、人を食っちゃうやつもいるし、そうじゃないやつもいる。なんなら人間を助けようとするやつもいる。だから
「デーモン=悪」
という簡単な方程式は成り立たず、デーモンは多面的な存在だと。
そう、それはそのまま人間にも当てはめることができ、人間の中には、人間を殺しちゃうやつもいるし、そうじゃないやつもいる。根本的には、デーモンも人間も同じ。
しかし「デーモン=悪」という簡単な方程式をつくりだした人間は、簡単だからこそ、そこで思考停止し、人間という種を壊滅状態にまで追い詰めることになる。

簡単な方程式をつくりだし、それに当てはめてものごとを決めつけ、そこで思考停止する。
ということは、歴史的にもよくあることだし、私自身もしちゃいけないと頭で分かりつつも、ついやってしまう。
固定観念に縛られると、他者を傷つけるのみならず、自分自身を駄目にすることになるぞ!!それでもいいのか!!という力強いメッセージは確かに伝わってきた。
多分これは、原作の持つ力強さなんだと思う(原作を知っている人に「そんなことないよ」と言われてしまったら、お終いだが)。
映画は兎に角ルックスが超悪い。でも、メッセージは力強い!!ということは...原作はどれほど素晴らしいのだろうかと想像せずにはいられない。

最後に、レビュー冒頭の

【この映画を観る際に『世紀の駄作』というバイアスを抜きに観るのは中々難しいのではないのだろうか?
だから、本作を観る時の姿勢は「いっぱい変なとこ見つけるぞ〜!!」となる】

この一節は

【「実写版デビルマン=世紀の駄作」
という方程式を鵜呑みにした視聴者が、そこで思考停止し、粗を見つけては攻撃する。】


と言いかえることができる。
この一連の行為は、劇中の人間がデーモンに対して行っていたことと図らずも一致するではないか!!??

ということはだ...実写版デビルマンは、あえて粗いつくりにすることにより、ただの映画で終わらすことを嫌い、その身を呈して、固定観念に縛られるおそろしさを教えてくれていると考えたら...どうだろう?
とても素晴らしい作品に思えてくるでしょ(んなことぁーないか)笑