やっぱりカルカン

カールじいさんの空飛ぶ家のやっぱりカルカンのネタバレレビュー・内容・結末

カールじいさんの空飛ぶ家(2009年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

4回目の視聴。金曜ロードショー・本編ノーカット。本来96分の上映時間なので長過ぎず短過ぎず。好きな作品なのに、なかなかテレビ放送されないので日テレさんに感謝。

普段はテレビで無料の映画ばっかり見てるけど、これは会社の先輩におすすめされてレンタルした事がある数少ない映画の一つ。あの時カールじいさんをすすめてくれた先輩にも大感謝。

自分の中にある「冒頭が素晴らしい映画ランキング」では他の作品に大きな差をつけて本作が堂々の第一位。まず最初、家が浮き上がるまでの20分少々で大号泣。夫婦の人生をセリフなしで表現している所がとてもいい。そして最後の30分「わたしの冒険ブック」に亡き妻からのメッセージを見つけて号泣、あんなに大切にしていた家財道具や貯金までも友達のために全て捨てるあたりでまた大号泣。何回見てもティッシュ10枚ずつは余裕で消費してる。

正直この映画において、喋る犬なんて全然重要じゃない。78歳のおじいさんが主人公のアニメ映画って事がまずすごい。カールじいさんはあんまり多くは語らないんだけど、長生きしてるだけあって色んなことを全部察して目線や表情だけで伝わる感じが本当に好き。
「フィリスはママじゃないよ」と言われて「どういう事だ?お前の両親は離婚したのか?」とか野暮な質問したり「そうか…可哀想に。変な事聞いてごめんな」なんて下手に取り繕ったりしない。一見ぶっきらぼうな頑固ジジイだけど、冒頭で人生を見せられているので視聴者だけが本当のカールじいさんを知ってるという素晴らしい構成。
ファインディング・ニモで母親が死ぬ所を劇中で徐々に明かしていく構成にしていたけど、父親が過保護すぎて魅力的に見えないとの意見があり冒頭に持ってきたらしい。カールじいさんもこれと全く同じ効果になっていると思う。

ラッセル君の家庭も複雑なのに、ひねくれたりグレたりせずに今のところ明るくて素直ないい子に育ってる。胸がギュッとなる。
恐らく離婚したお父さんの方とは疎遠になって、端的に言うとあんまり愛されてない感じなんだけど、カールじいさんの接し方が付かず離れずで丁度いい。私だったら多分思いっきり甘やかしたり顔色を伺ったりしてしまうだろう。

カールとラッセルは性格的に合わないような気もするけど、心が純粋な所は似てると思う。2人ともこの先ずっと仲良く、幸せでいて欲しい。
ラッセルのセリフ「つまらなく聞こえるかもしれないけど、つまらないものの方が一番よく覚えているんだよね。」は本当に共感した。私もラッセルと同じくらいの歳で生き別れになった母親との思い出は一緒に行ったスーパーの試食と、チキンラーメンはお湯がなくても割ってそのままスナックみたいにポリポリ食べられると教わった、そんなどうでもいい事を一番よく覚えてる。

ラッセルはまだ8歳なのに、ストーリーの流れでチャールズ・マンツを殺す必要は本当にあったのか、若干疑問に感じる。ネットでは「風船が何個か付いていたし死んでないのでは?」との意見もあったが、雲と同じぐらいの高さから人間が落ちる際5〜10個の風船が付いていたとて、どんな奇跡が起きても助からないと思う。
よく子供の目を塞いで「見るな!」と言うシーンがありますが、結構すぐそばで落下したので中々ショッキングかと。
マンツといえば憧れていた人に実際会ったら冷たい人だった、思っていた性格と違ってた、このパターンよくあるよね…私もある。カールじいさんの何が好きかって、ワクワクする楽しい大冒険だけじゃなくて結構悲しいヒューマンドラマ+大人向けな一面もある所が最高。
父親に新しい恋人(Wikipediaによると再婚相手)がいて電話したら邪険にされるとか、待ち望んで授かった子供を亡くす(Wikipediaによるとノベライズ版では子供を産むことができない体であることが判明したとの事)とか、単なる子供向けの冒険アニメだったら必要ないもんね。初めて見た時は最後に絶対お父さんが来てバッジを付けてくれるんだろうと思ってたけど、来ないんだよなぁ…それがまたいい。
カールじいさんがラッセルの事をエリーとの子供のように思っているのかな、とも考えられるし、苗字はキムでお母さんはアジア系の人だけど恐らく父親とその再婚相手はそうじゃないなど、ラッセル君についてはまだまだ思う所がある。逞しく育って欲しい…

私もフルリモートになって1年後の健康診断で肉体年齢が70代に跳ね上がったほど、家にずっと居ると不健康になり身体がどんどんなまっていく気持ちは分かる。カールじいさんも最初は階段すら一人で降りられず、杖をついて歩いていたのが最後には飛んで走って、杖がなくてもスタスタ歩いていた。あれは脚色も入ってるけど、多分ファンタジーではない。守りたい人がいると、力がみなぎるのだ。

ラッセルがカールをずっと「フレドリクセンさん」と呼んでるのもいい。音楽もエレガントで素晴らしく、登場人物が少ない所もまたいい。一部設定が突飛に感じる所もあるが、妙に現実的な所もあってトータルでは突飛な部分が然程気にならない。
最初に見てから10年以上経ってるのに毎回感動しているので、もっと歳をとってから見たらもっと感動するかもしれない。何年経っても、何回でも見たい、素敵な映画だと思う。

眠いので文章がめちゃくちゃで申し訳ない…