これがキェシロフスキの遺作となってしまった。96年没。もっと生きていたら、どんな傑作が生まれていただろう。
『青の愛』『白の愛』『赤の愛』で、お話的にも見事な結末を迎える。単体としての『赤の愛』は大した話ではないが、犬が可愛い。そして哀しみに似た表情を浮かべるイレーヌ・ジャコブと背景の真っ赤に燃える紅…これほど美しい(そしてドラマチックな)ショットを僕は他に知らない。
キェシロフスキは、キモい男を描写するのが得意だ。三部作のそれぞれで、キモい男たちが大活躍。それに翻弄されながらも彼女たち自身の実存を掴み取るさまが圧巻である。
キェシロフスキ、配信で観れるものはこれで観終わってしまった。個人的に『偶然』をとにかく観たい。TVドラマ『デカローグ』のDVDセットは高いし…いつか目にすることができるだろうか。
