みさき

トリコロール/赤の愛のみさきのレビュー・感想・評価

トリコロール/赤の愛(1994年製作の映画)
3.5
私が本作を鑑賞して最も印象的であったのは、タイトルにもなっている赤が実に多様に用いられていたことである。代表的なものとしては、主人公のヴァランティーヌのポスターの背景が挙げられるが、その他にも様々な小物や背景に赤色が用いられていた。これは情熱や愛の力を象徴しているとも考えられ、まさに本作のテーマカラーとなっているように思えた。また、クライマックスでのカットが劇中の序盤で撮影されたポスターの構図に似ていたことにも気が付き、この演出によって監督は何を意図しているのかとても気になった。
また、ストーリーに関して印象的であったのは、主人公のヴァランティーヌとジョセフは、恋人同士の愛ではなく、人間同士の愛としてつながっていくという点である。恋人や弟との関係の中で悩みを抱えるヴァランティーヌと、他人の家を盗聴する趣味を持つジョセフは、語り合いながら共に時間を過ごすことで次第にお互いのことを理解していく。また、ヴァランティーヌの、犬という命に対する愛もとても印象的であった。車で轢いてしまった犬をきちんと飼い主の元まで届け、病院にも連れていき、お世話もするという行動は、当たり前ではあるけれどもなかなかできることではないと思った。他の登場人物に対してもヴァランティーヌは優しく明るく振る舞う。この、ヴァランティーヌの男女の愛に限らず、誰に対しても平等に愛を持つというキャラクターは、トリコロールの赤の意味である博愛を表現していると考えた。《トリコロール/白の愛》と《トリコロール/青の愛》も鑑賞して、物語や色の使い方を比較してみたいと思った。
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