みおこし

GONINのみおこしのレビュー・感想・評価

GONIN(1995年製作の映画)
3.4
バブル経済崩壊後間もなく、社会からつまはじきとなったディスコバーのオーナー、元刑事、元サラリーマン、男性相手のコールボーイ、パンチ度ランカーの5人の男たち。暴力団・大越組の事務所を襲撃して大金を手に入れようと画策した彼らは、綿密な計画を経て強奪に成功するのだが…。

鬼才・石井隆監督の代表作のひとつ。佐藤浩市、本木雅弘、竹中直人、根津甚八、椎名桔平という豪華な主演5人に加え、ビートたけしや鶴見辰吾、木村一八、永島敏行などなど、一癖も二癖もある名優が勢ぞろい。最近『仁義なき戦い』や、香港映画の『男たちの挽歌』など、いわゆる裏社会映画をちょうど観返していたから余計に感じたのですが、本作に漂うブキミさは群を抜いています。前述の作品のキャラクターや設定は日常でまず出会わないであろう異世界感が強いのに対して、本作はどの登場人物もすぐそこにいてもおかしくない危うさを秘めているので、余計に生々しいんです。特に竹中直人さん演じるリストラされたサラリーマン・萩原のインパクトは絶大。当面忘れられそうにないトラウマシーンが出て来て、もはやバイオレンスを超えてホラー並みに怖かった…。主役全員が、人生の崖っぷちに追い詰められていて、犯罪に手を染めるほかないという悲壮感もまたリアル。
バイオレンスシーンも容赦なく、報復のためならば徹底的に弱者まで痛めつける描写に戦慄。あのクエンティン・タランティーノもこれには度肝を抜かれたと何かの記事で見かけました。

さらに特筆すべきは、ビートたけしさん演じる凄腕の殺し屋・京谷と、木村一八さん演じるその相棒・柴田の関係性。ヤクザの主従関係を超えて、ギリギリのラインの”恋愛感情”をもはらんだ特殊な関係。他にも同性愛描写を彷彿とさせる印象的なシーンがいくつかあって、邦画のバイオレンス映画としてはかなりセンセーショナルな演出に唸りました。
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