CANACO

GONINのCANACOのレビュー・感想・評価

GONIN(1995年製作の映画)
3.9
1995年公開の石井隆脚本・監督作品。同監督の『死んでもいい』(1994)は、学生時代に見て以来、男と女の物語として今でも時々思い出している。『GONIN』は見て本当によかった。

・借金で大越組から取り立てられているディスコのオーナー(佐藤浩市)
・男性相手のコールボーイ(本木雅弘)
・妻子持ちのリストラされたサラリーマン(竹中直人)
・パンチドランカーの元ボクサー(椎名桔平)
・汚職で退職した元刑事(根津甚八)

の5人が、大金目当てに大越組の金を強奪。その後、大越組に雇われたヒットマン(ビートたけし)と部下兼恋人(木村一八)コンビが5人を殺すために動きだす。それぞれの命の行方までを描いた物語。

バブル崩壊が1991年でその4年後に公開された映画。地下鉄サリン事件が起きた年。たとえるなら『孤狼の血』(2018)、『全裸監督』(2018)をかき混ぜて、『アウトレイジ』(2010)をふりかけながらも『眠らない街 新宿鮫』(1993)的なBL要素もある作品。

スター俳優勢揃い!の域を超え、気力も魅力もMAXに近い“ギラギラしている瞬間(とき)”の人が揃っているのが貴重で、監督の演出により全員が獣的な個性を放っている。男だらけの強奪&報復大会なのに、石井監督のエロティズムセンスで、色気のある写真を見続けているような艶のある仕上がり。昭和感ある鼻歌の入れ方、BGMの選曲も独特で耳に残る。

たけしさんは、1994年8月に起こったバイク事故後の映画復帰第一作で、左目に眼帯をしているのは、まだ目の状態が万全ではなかったからだという。全盛期のオーラを纏い、死の危機を乗り越えた本作のたけしさんはかなりキレキレで、中盤からの登場、この面子にもかかわらずその存在感により物語全体を支配していく。役としての変態度も高く見応えがある。

本作の企画は竹中直人さんが持ち込んだそうだが、竹中さんは1994年から1995年まで変態コント番組『竹中直人の恋のバカンス』をやっていた。たけしさんとは全然別の意味で乗りに乗っていた時期で、竹中さんだけ違うモードで演じている。ゲーム『SIREN』的なインパクトを与えるシーンがあり、強烈。

名シーンも多い。長回し長台詞も含め佐藤浩市さんにはやられっぱなしだけど、根津甚八さんや椎名桔平さんにもゾクっとした。ちょっと語りきれないくらいのギラギラ感。佐藤浩市さんと本木雅弘さんの絡みは、『死んでもいい』と同じくらい、この先も記憶に残っちゃうな。


◻︎メモ
サラリーマンの娘役を演じているのは栗山千明さん。ボクサーの恋人役を演じているのは横山めぐみさん。
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