デヒ

大人は判ってくれないのデヒのレビュー・感想・評価

大人は判ってくれない(1959年製作の映画)
5.0
映画の主人公のドワネルはまだ学生だが、家庭不和をきっかけで逸脱する行動をするようになり、結局社会で「問題児」と扱いされる。映画はただドワネルの逸脱とそれに対する社会の処罰を見せてくれるだけである。迫力あふれるストーリーも、おびただしいどんでん返しもない。ドワネルは特別な感情を見せず、ただ淡々と映画が流れる。むしろ、その淡々とした態度、そしてそのような属性の中から得られる喜劇性が映画にもっと没頭させる。
幼い少年の観点から、彼を理解できない親と大人たちに冷笑の視線を投げかけており、既成秩序の不合理と暴力が赤裸々に見える。言い訳を並べたり家出をする姿のドワネルの姿を見るともどかしくて眉をひそめるようになるのは間違いない。しかし、幼い頃の反抗と客気を包容できない大人たちの様子は、ドワネルをさらに外せるだけだ。

私は常に、一番印象深い映画を挙げるときにダルデンヌ兄弟の映画『自転車と少年』を第一に挙げる。『大人は判ってくれない』と共通点がいくつかある。親から愛情を受けられない幼い少年が主人公として物語が展開する、反抗期の子供、子供の純粋さと傷、ドキュメンタリー的な撮影。しかし、「自転車と少年」はサマンダがシリルの委託母となり、迷わないように導かれようとし。サマンダの献身があったからこそ、最後の場面でシリルは淡々と通り過ぎたものだと思う。今日観た映画は、最後の場面で少年は絶えず走り、海辺の前で立ち止まる。そして首を回してカメラを見つめ、カメラは急激に顔をクローズアップする。少年の表情はまるで観客に疑問点を投げかけるような表情のようだ。一息もできない瞬間だった。好きな映画になりそうな気がした。
デヒ

デヒ