主人公アントワーヌは、学校では先生に叱られ、家では両親の関係に悩まされている12歳の少年。唯一気を紛らわせられるのは、親友ルネと学校をサボって遊んでいる時間と、映画だった。しかし、そんな反抗的な行動はやがて大人たちに叱責され、停学とともにアントワーヌは家出を決意する。
面白いのは、舞台やロケーションにある。アントワーヌはいつも教室の隅のほうに追いやられるが、自宅でも彼の寝床はかなりかわいそうな場所に置かれている。実際のスケールよりも狭く見せる撮影で、彼の物理的にも精神的にも窮屈な感じが表れている。反対に、外に広がるパリの街並みは、すばらしいぐらいに自由で開放的だ。実際はもっとごちゃごちゃしているかもしれないが、モノクロというのもあって透き通る世界のようにも見える。そんな家、学校、街を往復しながら、彼が最終的に行きつく場所が、この映画のラスト。その有名なラストシーンで、アントワーヌは第四の壁を突き破ってこちら側にやってくる。
トリュフォーは27歳にしてこの映画を完成させた。ここで出会った子役ジャン=ピエール・レオと、この先ずっと映画を作っていく。そう考えるとかなりエモい作品。