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脱出のhasseのレビュー・感想・評価

脱出(1972年製作の映画)
3.8
演出4
演技4
脚本4
撮影4
照明3
音楽-
音響4
インスピレーション3
好み4

流れの激しいカヌー下りに挑戦する、四人の男のサバイバルアドベンチャー。しかし冒険譚としては異色かもしれない。連続的に起こるトラブル発生→葛藤・挑戦→克服というシークエンスの結末は決まって後味が悪い。暴行事件に巻き込まれたエドとボビーの救出は、暴行者一名を殺害し埋葬する結末を迎える。ドリューがカヌーの最中に倒れて水中へと姿を消すシーンでは、暴行者の残り一名による復讐で撃たれたと考えた三人は逆襲に挑むが、結果、全くの別人を殺害し、隠蔽工作する羽目になる。生還後、警察からの疑惑に対してシラを切り続け、証拠不十分で解放されるが、「二度とこの土地に来るな」と申し渡される。
これらのシークエンスの蓄積がこの作品全体に不穏な雰囲気を与えている。エドたちが葛藤や絶望を味わった三人の人間の死は、近い将来ダムの建設による滅びの時を待つ川や森にとって些事でしかない。自然は三人の死体を飲み込んだまま、人間によって滅ぼされる。これらの輻輳的な対比が独特というか、「ちっぽけな人間と大いなる自然」も見せつつ、「手付かずの自然と、それを滅ぼす人間の文明」もしっかりやる。

生還してすぐ見つけた現地民にエドが息も絶え絶えに「電話はあるか?」と聞くと「当然だよ」と返ってくる。こそで都会と田舎の立場が逆転しているといえか、自然に揉まれて還ってきた彼らの都会的な表面がそぎおとされてしまったことを印象づける良いショットだ。

しかし白眉は映像の純粋な魅力だった。男たちがオールを操り渓流を下るショットは、その運動性やスリルにおいて映像の素材として素晴らしい。画ぢからが強いというか。そういう意味ではルイス(バート・レイノルズ)のノースリーブレザージャケット&筋肉隆々二の腕もパンチが効いていて頭から離れない。彼はサバイバル術にたけているが傲慢で自信家な性格もあり、仲間から陰でちょっと痛いやつとしてイジられている(危険時の信頼感は抜群なのだが)。それがいい味を出している。そんでもって、カヌーでオールを操る彼の姿は、馬上で槍を振るう猛将関羽的な勇ましさがあってなかなか好き。
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