けーはち

荒野のストレンジャーのけーはちのレビュー・感想・評価

荒野のストレンジャー(1972年製作の映画)
3.2
流れ者を用心棒に雇って悪党を倒す町の住民は清廉潔白な無辜の善人か?──西部劇のクリシェの中に勧善懲悪から脱して善悪相対化を見るマカロニ西部劇の流れを逆輸入しさらに独自の視点を詰めたイーストウッド。障害者やマイノリティに優しいが、町のルールは無視して銃やダイナマイトをぶち撒けるし、ヒス女は犯して黙らせ、町の資産は貪る。気儘な天使と悪魔の二面的な主人公。彼は本当に正義か。彼が悪ならば、善人を排除し無法者に弱みを握られるようになった町の人間もまた悪。建物を赤く塗ってHELLと書くなどニューシネマの時代ゆえ変な思いつきに走るセンスは粗削りだが、本作は以降の彼のテーマの下地となっており、「誰も彼もがみんな原罪を背負う悪!」まで行くと「許されざる者」になるし、主人公の神性を煮詰めると牧師が主人公の「ペイルライダー」になるのであった。