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トレインスポッティングのBeatのネタバレレビュー・内容・結末

トレインスポッティング(1996年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ダニーボイル監督は「スラムドッグミリオネア」でアカデミー作品賞を受賞したが、本当に理解できない。インドの生臭さやクロスカッティング的に進むストーリー進行など評価できる部分がある一方、ご都合主義としか思えないクイズの問題の展開や場当たり的に進む主人公の成長過程、不快感しか与えない兄の行動等々嫌いな点が目立ち、見終わった後しばらくアカデミー作品を敬遠したほどである。

そんな監督の出世作がこの「トレインスポッティング」になる。
スラムドッグ~のトラウマはありながらも90年代を象徴する一作は観るべきと思い深夜にテレビ画面で再生ボタンを押した。

冒頭の軽快な音楽に合わせた主人公一派の走りは「ロック、ストック&~」を彷彿とさせたが、伏線回収型のクライムサスペンスではなく退廃的な状況で鬱屈した若者の心持をスクリーンに落とし込んだ作品だったと見終わった後には受け止めた。

クスリをやめて真っ当に働きたい、でもやめられない、やめようとしても打ってしまう、無理やりドラッグを断つ、仕事を始めたが・・・と展開されていくストーリーはリアルでありながら軽妙なカメラ回しもあって均整がとれている。トイレのシーンは汚すぎて一気に引き摺り込まれて好き。


さて。
若者にセットでついてくるのが仲間であろうが、通常主人公を支えたり共に戦ったりと同じ方を向いて物語内における壁にぶつかっていく仲間というものと異なり、ここでの仲間は主人公の望みを邪魔する存在になっている。

暴力的なアイツは金をせびってくるし、悪だくみが上手いアイツはいつ裏切られるのかヒヤヒヤする。ずっとつるんでいる同年代の連れは、誰よりも信頼できる存在などではなく、ある種の妥協による共依存のような関係になっている。そこが非常に生々しいし今作を評価したいポイント。

自分自身は友人にも恵まれ彼らに刺激を受けながら日々生きているが、自分とは異なる(経済的、地理的、能力的など様々に)人の周りには必ずしも理想的な関係が築かれているわけではないのかもしれない。ドラッグは人生を破滅させる悪であるのは事実として、それに頼る心情、そしてその心情が形成される環境というものを鮮やかに見せてくれるのがこの「トレインスポッティング」という映画なのだろう。


共感はできないが(それ故に楽しみきるのも難しくなる)理解は示したくなる、そんな作品。続編も早く観たい。
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