SAEKO

アメリカン・ビューティーのSAEKOのレビュー・感想・評価

アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)
4.1
虚栄に隠れる、本当の美しさとは。

冷え切った夫婦関係でも幸せそうに演じる妻、典型的なティーネイジャーの娘と、リストラ間際かつ中年の危機の父親。アメリカの中流家庭で、一見幸せそうに見えるが、次第に家庭が崩壊していく姿を、美しく流動的に、時に滑稽に描く。
ゲイコンプレックスの大佐に、ジャンキーの男子学生。平凡な女と思われるのが嫌で、処女を隠し、男にモテると豪語し、友達を引き立て役にしているアンジェラ。
タイトルの「アメリカンビューティ」は品種改良によって美しさを増した薔薇の一種で、いわば見せかけの美しさである。一見、物質的に満たされているアメリカだか、精神的には脆弱な結びつきであることを皮肉に伝えているようだ。

父親は、リストラされて見栄を張ることもなくなり、自分らしさを取り戻した。
はじめての夜だという、アンジェラも、平凡な女だと思われるのが嫌という見栄を無くし、素の少女になる。そこに本当の美しさを見る。

本当に見栄を無くし、リラックスした幸福感を得るのは死んでからしかない、つまり、生きている間はみな苦しいものだと言うのも、この物語の皮肉かもしれない。
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